《九通目の手紙》


ここ数日は、この世界では色んなことがありました。


一揆の最前線に立つ人たちが、ついに王の住む城まで辿りつき、それに合わせ、王の配下とおぼしき人間が姿を現しました。
こうした人間は強力で、最初の頃は快進撃を続けていた一揆の軍勢も、多くが足踏みをしています。

また、一揆の参加者達の中にも、同じ一揆参加者を襲って、お金や所持品などを奪っている者が出ているのだそうです。
さらには、そういう者を逆に返り討ちにしようとして待ち構えている者まで。

お母さまが聞いたら、きっと楽しそうだと思うにちがいないような、そんな、とても混沌としたありさまです。


世界はそのようなありさまでも、わたしの周辺は、今のところ、平和なものです。

（進攻先で、あまり会いたくない敵とばかり出会うことには、辟易させられましたけれど）


ですが、いつ、強い敵が立ちふさがらないとも限りません。
お金や所持品目当ての暴漢に、襲われる可能性だってあります。

そんな時に備えて、わたしは鍛錬を怠らないようにしています。

暴漢に屈するような、腹立たしい自体は避けたいですし、立ち塞がるものは、いずれ跳ね除けなければならならないのですから。











早朝の鍛錬は、まず木刀の素振りからはじめます。

アパートから軽くジョギングして、涼しい森の木陰を探して、見つけたらそこが練習場です。

木刀は、師匠から頂いた剣の重さに合わせるように、ちゃんと重りを入れたものを使います。
なによりも、武器の重さになれて、手足のように操れるようになるようにという、師匠の教えを実践するためです。


「五十！　五十一！　五十二！　ごじゅうさん！　ごじゅうし・・・」


以前は、獣も数えないうちに腕が動かなくなっていたわたしも、今では、百まで振り続けることができるようになりました。
（そのあとは、しばらく腕が痺れてしまって、動かせなくなるのは問題ですが）

百回振り終わったら、だらんと腕を垂らして、木陰で休みます。


「・・・よしっ、・・・いーちっ！　にーっ！　さーーん！！」


しばらく休んだら、２セット目の素振りを開始します。

二回目からは、腕がピリピリと痛むようになりますが、我慢して最後まで、振らないといけません。
それが終わったら、もう一度休んでから、三回目。


一日に三百回の素振り。

それが、最近のわたしのノルマ、そのいちです。




素振りを終えたら、アパートに戻って、タントーをやります。
タントー、というのは、クン・フウの訓練です。


この訓練は、クン・フウの達人であり、師範代であるシャオランさんという一揆参加者の方から教わったものです。
（クン・フウというのは、その方があやつる格闘術の名前です）


にぎった両手をまっすぐ前に突き出して、脚を曲げ、腰を下ろした姿勢で、じっと動きを止めます。
その姿勢のまま、一刻のあいだ、じっとすることができるようになるのが目標です。


「・・・・・・・・・・・うぅぅぅ〜・・・」


じっとしている、それだけなのに、タントーはとても辛い訓練です。


はじめてしばらくすると、まず腕が下がりはじめます。
先にやっている、素振りの訓練で、腕がすっかり疲れてしまっているせいです。

腕が下がりはじめたら、次は足がふるえだします。痙攣、というものなのだそうです。
このままぺたって座りたい、もしくは真っ直ぐ立ってしまいたい。そんな欲望が、脚をひっきりなしにつつきます。


「・・・ん・・・う、うぅ・・・うぅぅぅ〜〜〜〜〜〜・・・・・・」


気を抜くとすぐに下がろうとする腕を、なんども気力を振り絞って持ち上げて。
ぶるぶると震えて疲労を伝える、足の訴えを無視して耐えて。

そうしているうちに、ぎゅっと結んだ口の奥のほうから、絞りとるような、みっともない唸り声が漏れてしまいます。



それでも、限界まで、限界まで我慢しないといけないのです。



だって、一刻というのが、いったいどれくらいの時間なのか、わたしは知らないのですから。
（一時間ぐらいなんじゃないかとわたしは推測しています）

この不自然な姿勢でいることに、わたしのカラダがなれるまで、この訓練を続けなければならないのです。











エンブリオと契約し、その力を借りることでより強くなる。

それが、わたしがいる、メルンテーゼという世界に定められたルールです。



この鍛錬で磨いた力もエンブリオからの恩恵に比べたら微々たるもの。
はげしい戦いの中では、目にも見えないような、ほんの少しの役にしか立たないでしょう。


ですが、そのほんのわずかな力が役に立つ瞬間を、ほんとうの戦いの中では、はっきりと感じとることができます。


その瞬間のためだけに、訓練をかさねることが、いまのわたしにはたまらなく楽しいのです。

ただいま一匹と一匹は喧嘩しているようです
しばらくおまちください

そう呟くと、難しい顔をして黙り込んでしまいます。

左腕につけた腕章を見せました。矢印のような模様が描いてあります。

腕章をぺしぺし叩きました。

安心したと同時に可愛く見えたアムルちゃんを撫でようと手を伸ばすが、
フードの中がどうなってるのかも分からないので手を引っ込める

隠されちゃってちょっと残念そうだが、
理由を聞いて納得はしたものの

あはは、とほっぺたをかきながら

もふもふもふもふ。アムル地やんのほっぺたつんつん
調子に乗ってるのがちょっとずつ包み込んできているような気がする

がしゃこんがしゃこんと魔導アーマーで喜びを表すセイロンである。

自信なくなってきた

全身を使いアムルの頭部にしがみつくメンタイ。もはや頭をなでるとは形容しがたい姿である。

ほんのりとメンタイとアムルが触れる箇所に色が付いているような

アムルの白いほっかむりにまん丸とピンク色の染みが付いている。しかもほんのり磯臭い。フシメは若干目をそらしつつハンカチでふき取るようになで始める。

ナデリナデリと染みが抜けるかわからないが、ひたすらなで続けるしかなかったのであった。

最後まで、静かに聞いてしゃがみこむ。
そして、フードの上に手を乗せた。
抵抗がなければそのまま、何度か頭を撫でるだろう。

人形を受け取って、自らの肩の上に乗せ。

知覚する能力の高さと質問の内容のギャップに戸惑いつつ自分なりの考えを伝える

期待を込めた真剣なまなざしで見つめる

敷き布にちょこんと座り、ノノと呼ばれる妖精が、カレーをつくる様を凝視しています。

差し出された甘口のカレーをせっせと口に運びます。カレーの香りでずっと空腹感を煽られていたせいか、あっというまに平らげて、コップの水も飲み干しました。

魂の行き着く場所…。
アムルの話をそのまま聞いて、エシャロットは何やら、納得したかのように頷きました。

一体何を想像しているのか…！