『ルアさんは、どこまで強くなるのが目標なんですか？』

何の気もない些細な質問。
そんな会話の最中にも関わらず私は沈黙してしまう。

「あの…ルアさん？どうしました？」

そんな私を心配してか目の前のアムルさんが声をかけてきた。どうやら心配させてしまったらしい。

「あ…すいません、ちょっと考え事をしてしまって。」
「そうですか…てっきりどこか痛むのかと。」

うーん…かわいい、思わず抱きついてなでなでしてしまいたい、そんな衝動を抑えながら私は言葉を紡ぐ。

「強く…、私自身よくわかってないんですよね。師匠からはよく『自分の信じる道を往きなさい』って言われてたんですけど肝心の言葉の意味は教えてくれなくて…『道』が見えるようになるまで…でしょうか？」
「……」

私の言葉にアムルさんはよくわからないと言った顔で見つめてきます。

「あ、ええっとですね。漫然と剣を振るだけじゃなくて自分の中で剣をどう捉えるか、どういった意志を込めて振るのか…そういうものでしょうか。」
「…よく、わかりません。」

そう言うとアムルさんは小さく『ごめんなさい』と言って視線を逸らしてフードを目深に被ってしまいます。

「…いえ、私こそごめんなさい。自分自身もわかってないことを軽々しく口に出すべきではなかったですね。」
「大丈夫、です…言葉にしないと自分でもわからないことってありますから。それにこんな顔をしてたらお母さまに『もうっ、アムルちゃんったらそんなことも知らないんだ♪』って言われるに決まってます。」

顔を上げたアムルさんの顔には対抗心のような顔が浮かんでいました。

「アムルさんのお母さんですか…一体どんな人なんです？」
「会って数日の人に私の名前を決めさせるし笑顔で知りたくもないことを教えてくるセクハラ魔神です。」

そう不機嫌そうに言うアムルさん。

「そ…そうですか…。」
「…もうひとりのお母さまは色々なことを教えてくれました、武器の使い方や料理の仕方、生活の仕方…それに、夜伽の仕方も。」
「よと…っ！！」

その単語に思わず吹き出してしまう、きっと顔も赤くなっているのだろう。

「…ルアさんのお母さまはどんな人なんですか？」
「わ、私のお母さんですか…？そうですね…いつも笑顔で、明るくて、魚が大嫌いで、身長と同じくらいの包丁を振り回してて…とても料理がうまいんですよ！」

身長と同じくらいの包丁…のところでアムルさんが怪訝そうな顔をする。と、同時に興味も持ってくれたようだ。

「なるほど…ルアさんのお母さま…いつかお会いしてみたいですね。」
「はい、私もアムルさんのお母さんに会ってみ…」
「やめたほうがいいです。」

私の言葉を遮ってキッパリと言うアムルさん。
うーん…一体どんな人なんでしょう？



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「へぷちっ」
「んあ？ナクァはん、カゼかいな？」
「ふふーん、きっと誰かがかわいい私の噂をしてるのね♪」
「せ、せやな」

ただいま一匹と一匹は喧嘩しているようです
しばらくおまちください

仔犬は嬉しそうに微笑んだ。

仔犬は、細い首に掛けられた赤い首輪に、そっと手をやった。

そう言って、余り役に立ちそうにない仔犬は小さな胸を張った。