——意識が飛んだ。

俺では俺の声を聞いて、俺の意識はどこかへと吹き飛ばされた。

辿り着いた場所は、緑溢れる大地だった。
ここには見覚えがある。
この森の中央には古代遺跡があり、そこには禁忌が眠るとされている。

——黒の禁忌。

触れるべからず、近づく事なかれ、アレは人に扱えるモノではなく、人を食い壊すモノ。
太古の呪いだのなんだのそんな事を言って多くの冒険者がここを忌嫌った。
だが、そんな場所だからこそ調べてみたくはなるものではないか…
自分のチカラを試してる最中だったので身を隠さなければならない。都市にあり続けるのは危険を伴う。俺は人が近づく事を嫌う禁忌の森は丁度良い隠れ蓑で、暇つぶしついでではあった。
森の中央に近づくに連れ、生き物の気配はなくなる。

なるほど、ここは死ノ森か。
狩人なんかは、生き物の居ない森や山などをそう呼ぶと聞く。
ここがその一つか。
それは確かに民草は恐怖も覚える。

だがそれでは、国が怯え近づく事を許さない訳がわからない。
故に、ここに何かがあると踏んでいる。

ほどなくして、呆気なくも俺は古代遺跡へと辿り着く。
呆気無いもので、着いてみればただの遺跡のような場所だった。

——空気が、確かに揺れて。

そう言う風に思えた。
並みの人ならばそこで恐怖を覚えただろう。
並みの人ならばそこで危機感を感じるはずだろう。
けれど、

そう呟く俺が遺跡の中へと姿を消す。
そうか、これは…これが俺とフィーリを所有するに当たった時の記憶か。
あまりに、あまり■く■の事で■■■しまっていたな。

しかし、期待に反して遺跡の中は無人で何もなくて
最奥に唯一つ、黒銀のような金属で出来た鎖の先に刃がついた武器が祭壇のような台座の上に置かれているだけだった。

——フッとここで意識が現世へと戻ってくる。

フィーリも今の記憶を見ていたのか、そう呟いた。
いや、コイツが見せたのか？

その言葉を聞いた瞬間に、何かが繋がったような気がした。

青い鳥＜ブラウアー・フォーゲル＞に踊らされるようで癪だがな。
そういう役をやれと言うことか。
いいだろう。

いざ咥えたは良いものの、なかなか相手の手は離れる事はない。
それどころか何やら急に思案顔を作り出す。
一旦咥えてしまったものも離すのは何か違う気がして、そのままにしていたけれど。

考え事は思っていたよりも長く、その上アイスキャンディーはその間に動かされて。
食べづらい事、この上なく、抗議の為に声をあげてはみたものの。
その間も動かされており、もごもごと唇を動かしたりして何とか心地の悪さを誤魔化したりしていた、が。

相手が気付いて、ようやく食べ物から口を離す。
咥えていたまま、という状況と動かされたせいだろう。口が少しピリピリするのか唇に指を置き、なぞる。

通りを歩いていると、小さすぎるぐらい、小さな風体の少女に呼び止められます。

少女はフードをまぶかにかぶり、手には籠を下げています。
それだけならば、物売りの類とも見えますが──

──片手に下げた剣が、少女が、いわゆる一揆参加者であることを、雄弁に告げているのです。

少女は、商人の荷物などを見てそう判断したようです。

少女はなぜか、少し恥じるように目をそらして、そんなものを注文してきました。

自らを見据えるどこまでも冷たい金色の瞳。
“それ”から発せられる雰囲気を感じて、少しだけ少女は後悔していた。

でも、同時に良かったって、そう思っていた。

思った通りだった。
この一見人の良さそうな青年は、決してそれだけの人間では無かった。
いや、むしろその後ろから出てきた気配こそが———

彼は言った。

『超常のチカラを持つモノに頼るのではなく自力で解脱してこそ真に終われる』

と。

……でも、私はずっとずっと抗って来た筈だ。
これまでの私も、ずっと。

にも関わらず、この淀んだ袋小路は相変わらず閉ざされたままだ。

だから———

なら、それならっ

それはきっと誰から見ても醜い足掻きだっただろう。
でも、今は、それこそが自らに必要なことだと、少女は思っていた。