■A sacred spirit...

——そのマスターとの出会いは、過去マスターとして仕える事になった者達の中でも、最悪の部類に入るものだった。

保管されている“神聖石”の数も少ないのに、そこに“魂”とも言える神聖霊が宿るとなると、片手以内でしかない。
よってその貴重な石の据えられたものは、必ず誰かの専用にと鍛えられる。

次代にその石が据えられる武具は、一族では少数派の魔術が不得手、その分高い身体能力と武術の長けていた者の為に長剣として鍛えられた。
かの存在が一人前だと認められ役割を与えられて、神聖石の据えられた特別な精霊剣を授けられた日。


よりによってその存在は、精霊剣を豪快に叩き付けるようにして床に落下させた上。
“こんなものは要らない、普通の長剣と身一つで十分だ”と吐き捨てるようにして、部屋を飛び出していったのだった。


その場に集っていた者達を揃って絶句させた前代未聞の事件。
かの存在が“長”の説得によってそれを帯剣すると決め、手に取った折から暫くは日々口論が絶えなかったものだ。


今の剣の主にしてマイマスターは、シェルシェーリィという名の女性剣士であった。


“騎士様なんて堅苦しくて崇高な理念を持った存在は私には到底似合わない、だから剣士でいいんだよ”


ここ数代仕えた中でもとびきり腕は立つクセに、その気性行動は文字通りの問題児。
感情的で豪快、単純かと思えば突拍子もない事をしでかして。
大体において直感重視、行動してから失敗も暫し。

その所為での怪我どころか、死に掛けた事も数知れず。
しかしそれらも自身の責任だと、全く懲りずにけろっとしている、そんな不可思議な人物。


はっきりいって故郷では浮きまくっていて、様々な意味で異端児として周囲から距離を置かれているわけだが。


「……これはこれでなかなか面白い、と思って居る辺りで、我も少々マスターの気性に染まっているのやもしれぬな」


淡い光を放ちつつ浮遊していたアークと呼ばれる少年姿の神聖霊の呟きを、人並以上に優れた耳で拾い上げたマスターが、何か言ったかい？　と問い掛けるのに、何でもないと答えつつ。

出会った頃よりは、容姿も含めて成長が見られる己のマスターを見守りながら。
何だかんだで自身がマスターと定めた者には甘い自覚があるのを内心苦笑しながら。


“……はたしてこの世界での旅路は、如何なる変化をもたらすのであろうな……マスターにも、我にも……そしてクレシュミエントにも”

城内に入る前にあなたに云った。

今までと気色の違う人工施設を渡りながら偽は云った

（シェリィの剣が光を帯びたのが予想外だったのか、うろたえている！）

（ギガヤは闇雲に移動している！）

☆判定☆
1:（たまたま）回避成功！ 2:かすめる！ 3:クリーンヒット！
1D3 = 2 ( 2 )

徐々に表情が緩んでいくレシュを見て、微笑ましげに目を細める。

シュプーをクレシュミエントの腕の中におさめた後、軽く肩をすくめてウインクした。

何か警戒するでもなく、あっさりゴスっと長剣があたっている。

涙目ではあるが、結構頑丈そうだった。

一瞬騒いだものの、続く言葉で真顔になっていた。そして

きょとん、とした顔をした。

（がしゃがしゃ弄っている→あかない→殴ってみた→なんか壊れた←ぇ）

メイドは冥途じゃないのにシツジとはこれ如何に。

倒れたシツジを抱き込み、その頭をさらりと撫でる。