ENo.516 大神美弦

「物語を始めたいんでしょ？」
　ののわは神妙な顔で、
「だったら、真面目に傷と向き合わなくちゃ」
　しかつめらしい口調で、
「みつるん、そろそろ君の物語をはじめようよ」
　まるで、物語の導き手の賢者のような
「だから、まずはこの記憶から――――」
　忌々しい、姿だった。
　
　
　　　　…
　　　　
「というわけでー、はーい。ネタ振りには答えるののわさんのこのサービス精神、マジおかん級！」
「ぶち壊しだー！」
　しかもそれピンクだし！　いおりんだし！　釘宮だし！　お前は中村先生だろ！
「今回のネタ振りはENo.604　ツキノメさんより頂きましたー！」
「ラジオかよ！」
　そんなん募集した覚えないよ！　というか俺その人知らないよ！　そもそも人気投票とかで露出した覚えもないから……ない……のはまあいいか、別にそんな問題じゃない、大丈夫、気にしてない、とりあえず見ず知らずの人に認知されてることはないと思うんだけど！
「正しくはカニちゃんの中の人からー」
「おいｨ！」
　もういいよ、そのレベルの話は！　何、何なの？　中の人同士知り合いなの？
「Exactry!（その通りでございます）」
「Engrishだよそれは！」
　ryじゃねえよ、lyだよ！　基本的すぎてもう何も言えねえよ！　ていうかPLレベルのメタ会話は自重してくれよ！
「http://twitpic.com/8t7fo9　アドレスはこちらー」
「しかもTwitterでの話かよ！」
　ひどい、酷すぎる。のっけからなんだこのテンション。これプレイログじゃねーよ、中の人のなりきり日記って言うんだよこういうのは！　痒くなるを通り越して壊死してるよ！
「というわけでリクエストには応えたから真面目な話はこれでおしまい」
「いやそのりくつはおかしい」
　リクエスト答えてない、答えてないよ！？　真面目な話とかこれっぽっちもしてないよ？

「いつにも増して酷い……」
　失意体前屈の構え（所謂ＯＴＬ）で頭を振る。もうダメだ、こいつらもうダメだ。俺のシリアスな話ってどこ行ったの？
「まあ、真面目な話をするとだね」
「お、おう」
「シリアスな話は他のキャラでやってて、しかも胃がキリキリするような展開ばっかだから、『こっちではシリアスモードはやんない』っていうお達しが」
「最悪だー！？」
　待って、待って。する予定って聞いてたよ俺は！？　しないの！？　マジで！？　予定変更！？
「隔週更新がしばらく続くし、りすも忙しい時期だし。モチベが、こう、アレらしいから。エンジェルノーシンク、テンションはフリーダム、超エキサイティンに適当にやるってさ」
「ｳｿﾀﾞﾄﾞﾝﾄﾞｺﾄﾞｰﾝ」
　ｳｪｰｲ（0w0）ﾉｼ
　あばば。
　ば。
　
　
　　　　↓
　
　
「お、あまりの失意にちょっと意識飛んだっぽ？」
「……ちょっと可哀想かしら。私の分までしわ寄せ全部行っちゃってるし」
「まあいいんじゃないかな。シリアスな話になると一気に血腥くなるから、このくらいでいいでしょ」
「結局血腥いのねえ」
「んー、まあこの世界線だったら大丈夫だろうけどさ。シリアスな話は、多分どっかの同じ名前の同じ素体の同じ骨子の別の誰かが引き受けてくれるよ」
「あなたは本当に世界を俯瞰するのが好きねえ」
「まーね。これののわさんの唯一の特技だし」

「それに、まー。今回から、多分もうちょっと色々動き出すだろうし」
「あら、そうなの」

　　　　↑
　
　
　……なんかすごいアホな理由で失神してた気がする。
「おう、まだいたのか。大丈夫か？」
　……ぼんやり意識が戻ってくる。気づくとお頭っぽい人にぽんぽん肩を叩かれていた。
「……あー、はい。だいじょぶです。街もそこですし」
「おう、着いたらすぐ横になれよ。リベンジはいつでも受け付けてるから、金が足りなくなったらまあ来いや」
　やだ、この人超いい人っぽい。こうなんか、悪人面した俳優がものすごい善人みたいなそういうアレかしらん。
「しかしまあ、嬢ちゃんの相方、あいつ相当厄介だなあ。元々あまりシリアス寄りな世界じゃないけど、輪をかけて不真面目だ。楽屋ネタは面白くないし、何より越権行為って感じがする」
「なんか、すいません……。後でアレしばいとくんで」
「いや、やめたほうがいいだろ。ああいう手合いは真面目に絡むだけ損だし、嬢ちゃんの場合は一緒にいたほうが不幸を回避できる気がする」
　勘だがなと言い足して、ガハハと笑う。アレが幸運の証とかやめてほしいんだけどなー、うーん。
　なんだかなー、と毒気を抜かれてしまう。そういえば嬢ちゃん呼ばわりだが、……まあいいか、今は。
「んじゃ、そろそろ行きます。また今度」
「おう。そん時はちゃんと役作っとくからなー」

　そんな感じで。
　なんかもう色々諦めて、もういいやと捨て鉢になる、１９の夜。
　
　
　だから、次からどうなるかなんてことに一切気なんて払っていなかった。