ENo.1604 エナ＝キークロップ

◆朝：ゾンビさんがいっぱいです・・・！◆

朝靄に包まれさらに不気味になっているかもしれない洋館を発見。
エスタの街での依頼ではここにゾンビが出没するらしいのですが・・・

キュ「らしい建物過ぎてなんかうさんくさくなってきたわね、ホントにたくさんゾンビいるの？一人も外で歩いてないじゃん」
エナ「それはそうですけど、やっぱりいると思いますよ〜？それにいないならいないに越したことはありません」

館自体が遮断しているのか周囲の茂みが吸収してしまっているのか、ゾンビらしい匂いもほとんどせず
その代わりになにやら淡い香水のような匂いが鼻につきました。
どこから流れてきているのでしょう？

キュ「これは、香水と言うよりはまた別の特殊なものの匂いね。私はあんまり好きじゃないわ」
エナ「そうなんですか？」

そんなことを話していると、際の茂みががさっと動きそこからシスターの姿をしたおそらく人間の女の子が出てきました。
その女の子かラブわっと広がった匂いで香源は彼女だと分かりました。
どうやら依頼主さんのようです。

エナ「こんにちは！えーと・・・レムネットさんでしたよね？ゾンビって何人くらい・・・」
レム「こんにちは。ゾンビなら洋館の中に数え切れないくらい・・・」

あいさつもきちんと終わらないうちに件の洋館の扉が独りでに開き、何者かが出てきます。
よく見るとちゃんと服も着てなにやら空を見上げて「いい天気♪」みたいな表情をしちゃっていますが、ゾンビのようです。
あれだけ清潔？にされていたら匂いもあんまりしないことでしょう。なんとなく納得してしまいました。

エナ「えーと・・・あれを倒すんですよね？」
レム「はい！」

依頼主のレムネットさんは当然やる気満々で、じりじりと距離を縮めて切ってしまっています。
でも、こんなへんぴなところにすんでいますし、おそらく町へ人を襲いに言ったりもしないのでしょう。
それに、なんだか花に水をあげているのまでいますし・・・あんまり悪いゾンビさんには思えないのですが・・・

エナ「ねぇねぇキューク・・・あのゾンビさんたちって倒さないとダメですか・・・？」
キュ「そうねぇ・・・私もあんまり必要性を感じないけど、その世界ではゾンビってのがいるだけでダメなのかもしれないわよ」
エナ「それはなんだかひどいような・・・」

ちなみにわたしたちがいた世界ではゾンビは生物の一種と数えられ普通に一緒に暮らしていたりします。意思の疎通ができる場合はですが。
なので、ああいう社会生活をしているゾンビさんを一方的には・・・

エナ「って・・・レムネットさんが近づいていったらゾンビが・・・！」
キュ「ほら、いそいで！！」

どちらに原因があるのか分かりませんが、ゾンビさんたちがレムネットさんに敵意を向けて近づいていっていることだけは分かりました。
ここまで来たのですし、戦いながら答えを探ってみましょう。

・・・・・・
・・・

エナ「ふ〜・・・何とかなりました〜」

これだけのゾンビが倒れていてもやっぱり匂いがしません。
むしろミントのようないい匂いがするぐらいです。
さがせば防腐剤とか香水とかいろいろ薬品があるかも・・・です♪

キュ「エナー、なんだか悪い顔になってるわよ〜」
エナ「へぅっ！洋館をあら探ししようなんて思っていませんよ？」
キュ「はぁ」

語るに落ちるとはまさにこのこと。
それにしてもレムネットさんは倒したゾンビには目もくれず館の中に入っていきましたが、
中で結構行動していますね・・・ドアの音とかが外まで響いてきています。

キュ「そういえば、残党とかはいないのかしらね、いたら結構危ないんじゃないかしら」
エナ「それもそうです！レムネ・・・あ・・・」

後を追おうとした直前にとても残念そうな顔をしたレムネットさんが出てきました。
どうやら彼女は何か捜し物があって洋館に用があった？ようです。多分何も見つからなかったのでしょう。
わたしたちに報酬だけ渡して山を下りていきました。

エナ「なんかがっかりしていましたね」
キュ「そうね。何をあんなに一生懸命さがしていたのかしら」

もしかしたらまた未来会うかもしれないレムネットさんの後ろ姿を見つつわたしたちは北へと向かうのでした。

◆昼：ゆったりと素材探し◆

エナ「さむっ・・・」

先ほどまでは洋館まで歩いていましたし、戦闘もあったので身体が温まっていましたが、
周辺を探索するに当たってあまり動かないでいるとその気温に気づきました。
それも当然です。そんな山奥にいれば標高も当然高く、気温も低くなります。
空気が薄いのなどは平気なのですが、寒いのだけはやっぱり無理です。

キュ「はぁ・・・情けないなぁ」
エナ「全身毛皮の人に言われたくないです！」
キュ「エナもそうすればいいじゃない」
エナ「・・・できないの知ってて言ってますよね？毛皮はいじゃいますよ？」

座った目で尻尾をつかむとさすがに謝ってきたのでやめましたが、
今度寝てるときにわたしの全身毛皮下の薬の実験材料にしてやるのです。
貴重な貂の毛皮ですからね・・・♪

キュ「ちょ、ちょっとわたしはあっち探すわ」
エナ「あっ・・・」

こちらの思考が読まれたのかなんなのか、わたしの首もとから離れすいすいと茂みに入っていってしまいました。
首から毛皮がなくなりさらに寒くなってしまいました・・・何と言うことでしょう
これは早急にキュークに戻ってきてもらうほかありません。

エナ「キュークーっ毛皮はいだりしないから戻ってきてー！」

返事がありません。
・・・よく考えてみたらなんてことを大声で叫んでしまっているのでしょうか。
ルニさんもちがやさんももしかしたら他の冒険者さんも近くにいるかもしれないのに。
これじゃあ恥ずかしくてキュークも出てきてくれませんよね・・・

エナ「何か代わりになるものはないですかねー」

そう思ってカバンの中を覗いて見るも、防寒具になりそうなものは何もなく
一瞬、本を燃やして暖をとろうかとも思いましたが不始末で山火事になったりしたら大変ですし、
そもそもわたしが持っている本を燃やせるほどの火力はわたしでは出せません・・・

エナ「・・・キュークー！！」
キュ「はいはい、も〜・・・」
エナ「あ・・・♪」

戻ってきたキュークはなにやら黄色い石を持っていました。
聞くところによると別にわたしの思考を読んで逃げたのではなく、ふと何かが呼んでると感じてかけていったそうです。
それでこんな良さそうなものを見付けてくるなんて・・・やっぱりキュークにはしばらくはかなわなそうです。

◆昼過ぎ：新しい街オルゼです！◆

エナ「街です〜〜！！」

この世界に来てから三つ目の街です。
建物は白が基調の石で作られていて彫刻のような文様がちりばめられていたりしています。
なんだかこの街は歩いているだけで装飾品のアイデアがわいてきそうです。

キュ「きれいね〜・・・ちょっとあっち上ってみない？」
エナ「いいですね〜♪」

ルニさんとちがやさんと集合場所（宿）の約束をして早速外れにある展望台へと移動します。
おそらくあそこからなら街全体を一望できるのでしょう。

キュ「こんな雰囲気の街は初めてだわ」
エナ「わたしもです〜・・・はぁはぁ・・・んしょっ」

最後の方だけ妙に急になっている階段はわたしのような身長だと結構きついです。
階段を作るならちゃんと均等に作って欲しいところです・・・でも、もしかするとこれも何かの作品の一部だったりするのでしょうか？

やっと登り切ると望んでいた以上の光景が目に飛び込んできました。
まさに言葉では言い表せない絶景です。
初めてだと言うことを差し引いても、ここで暮らしてもいいと思えるほどです。
それでも毎日過ごしているとなれちゃうんだろうなぁ
本当ならここで写真でも撮りたいところですが、あいにく機械は持ってきていませんし、フィルムもありません。
キュークはなんか紙に念写しようと頑張ってますけど

エナ「キューク、どう？うまくいきそう？」
キュ「んﾞ〜〜・・・っ、はぁ・・・だめね。紙だからってのもあるけど、この景色を上手く切り取れないわ」
エナ「そうですよね〜・・・あ、いい風・・・」

少し寒い風が今は心地よく、しばらく二人で景色の中で見付けたものについて妄想話を咲かせた後
日がかげってくると共に宿へと向かいました。

◆過去：キュークとの出会いその四◆

その後しばらくは同じようなキュークに守られる生活が続いていくのですが、
わたしが自我を確立させるにつれ、お互いが反発し合うときもありました。
だいたいはちょっとした小競り合いで終わり、禍根も何も残さなかったのですが、
一つ大きな事件・・・当時としては重大事件が起こってしまいます。

そう、単純に言えばわたしがキュークの大事なものを壊してしまったんです。
よくある話ですね。
でも、実際にことが起こると本当に修羅場と化していまいます。
大事なものとは今わたしがつけてるような尾輪でした。

キュークの長い毛で全然気づきませんでしたが、家に来たときからずっと尻尾の根本につけてあったそうです。
幼いわたしはそれをじゃれているときに見付けあろう事か手にかけ尻尾から抜いてしまったのです。
当然キュークはすぐさま気づき、取り返そうとしますがまだまだ習いたて・・・
体格で押されると上手く集中することすらできなかったようです。
なんとかわたしを貼り付けて取り返そうとした瞬間、バカなわたしはそれを飲み込んでしまったのです。

そうして、キュークがお父さんに泣きつき、なんとかわたしのお腹の中から救出されたものの、
ちょっと溶けたりしてしまっていたそうです。そのときぐらいですね、本気でキュークにたたかれたのは。

その後、年単位でキュークはふさぎ込み。わたしはあまりじゃれつかなくなりました。
下手に寿命が長いとダメ・・・ううん、なんでもないです。
その頃からですね。なんとか代わりのものを作れないかと浅はかな思考からでも装飾品を作り始めたのは。
でも、記憶なんか曖昧でキュークの尾輪の形なんてほとんど覚えてないのにその当時は本気で作っていたんですよね。

なんとか形になった（と自分では思ってた）ものを持ってキュークに謝りに行くと、
キュークも吹っ切れたような顔ですごく久しぶりに、頭を撫でてくれました。
エナはそこで大泣きしてわたしの尻尾を放さなかったってだから介入してこないでください！
そういえば、今は尾輪してないですよね？おいてきたんですか？