ENo.2435 【炙殺の】イオアンナ

異世界の夜を支配する、絶大な力を持つ貴族の一人。
ただしそのポジションは決して高くはなく、同じ地位の座にある
七十余名の中においても、純粋な戦闘能力という意味では下層に位置している。

色素の薄い肌の、紫がかった黒髪を持つ少女の姿をしている。
髪と同色の瞳は夜よりも暗く、その容姿は清純な様でいて何処か病んでいる。
純白の絶対に燃える事無いペプロスに血の様に赤黒い色をしたショールを羽織っており、
彼女の本来の偉大なる主、城塞伯に仕える似たような装束を纏う乙女たちの一団の末席に数えられている。
その役目は斥候・密偵であり、今回は血毒の魔女に主から一命を受けて力を貸している。

性格は嗜虐にして被虐。
身に宿した炎と叫喚の雄牛の像を以って仇為す者に苦しみを与えるが、
彼女もその破滅もたらす輝きに手をやり常に同じ痛みを共感し狂歓する。

上記の通り、彼女本来の戦闘能力は並み居る魔性の貴人達の中では決して強い方ではない。
ただし、辺境伯の中でも五指に居る古参の実力者である城塞伯の配下である彼女は、
限りなく不滅に近い性を備えており、故苦痛への耐性が非常に強い。
痛みを感じないのではないが、その許容範囲が並外れているのである。
どれだけ責められても、どれだけ苛もうとも。彼女は狂わず、薄っすらと微笑んで見せるのだ。

そんな彼女に城塞伯は炎の力を与え、また別の辺境伯はとある魔具を彼女に授けた。
故に彼女はこの二つ名で以って呼ばれる――【炙殺（しゃさつ）の】イオアンナ、と。

―ファラリスの雄牛
彼女が大いなる深遠伯から賜った魔具。
多くの王や聖人の命を奪ったとされる逸話のある真鍮の雄牛の像のレプリカ。
炎に炙られれば中の哀れなる歌い手が愛おしい音楽を奏でるとされる。
イオアンナは常にこの像に侍り、炎でも燃えぬ衣を通して伝わる
死与える熱に身も心も魂さえも焦がして静かに高らかに嗤う。

―【血毒の】ヴォワザン
イオアンナが力を貸し与える魔女。
彼女もまた自身の眷属数名を率いこの世界で暗躍する。
全ては、かつて偽りの島で逃した【杯】を奪う為に。
以前の指揮官である子爵位を持つ者も別の意を持ち
同じ行動を取っていると言うが定かではない。

―聖十字師団
異世界で力を振るう、神意の下に集いし異端を撃つ為の一大集団。
つまりは、イオアンナらに対しても討伐の意を持っているという事。
世界の綻びを渡り、その尖兵が此方に渡ってきているとも。