関所で足止めを喰らった。この先は許可が無いとダメとかなんとか。
御苦労な事だ。
王命ではあるのだが、極秘任務のため口にする事はできない。
とりあえず、手際の悪い王に文句の連絡を入れると

「教会の巡礼なら認められるでしょうから、適当な聖職者を探して下さい。事情は知っているでしょうから」と言われた。

門を出るまでの関係なら、お布施や食料、あるいは行き先によっては道中の護衛を申し出ればすぐに見つかるだろう。
グリフも、しょうがないとばかりに肩を竦めた。
とりあえず今日は遅いので休む事にする。明日、教会にでも行くとしよう。




教会で巡礼に行く人がいれば、と思って軽い気持ちで入ったが、神官戦士らしき連中に奥まで引っ張られた。
先日の城での一件が頭に残っていたので、今度は薙ぎ倒してやろうとするが二人に止められる。
仕方なしに奥へ連れて行かれると、王命を受けて宝玉捜索に乗り出すのかと確認される。
そうだ、とディラックが答えると客間に連れて行かれ、待つように言われる。
待つ事しばらく。グリフと私が扉を破壊し、神官戦士を蹴散らし、その後どうやって脱出するかを話し合っていた時に、老人が一人、入って来た。
司祭の一人であると言うそいつは、頭の禿げかかった陰険そうな男だった。強面と言うよりは、正確の悪さが顔に滲み出ている感じの。

そいつは挨拶もせずに、待たせた詫びもせずに、長々と語り始める。
要約すると奴が言っているのは教会の歴史で、宝玉は教会の物だったらしい。
それを過去の王に強奪され、何度も返還を求めたが応じず、そして今回一方的に無くしたのは許し難いし、これ以上王に任せてはおけない。
魔王討伐に使うのは構わないし許可もするが、その後はこちらが預からせてもらう…という内容だった。
3時間もぶっ通しだったのでたいへん疲れたし、クソ真面目に最期まで聞いてしまった事をかなり後悔した。

ディラックが、聖職者と一緒に外へ出るのを許可できないか改めて頼むと、苦々しい顔でそれは承知している、と言った。
——後で調べたら、どうも力関係で王には逆らえないらしい。リスクは伴うが、王がその気になればこの教会を異端指定する事だってできるそうだ。
あの3時間はただの八つ当たりなのだと思うと、今まさに気が重くなりそうだ。

閑話休題。
ただ、関所を出るまでではなく宝玉探索にも同行させろと言って来た。
一応の戦闘は可能だが、道中の安全はこちらが守れと。
当然、誰かを守りながら戦うのはとても難しいし、危険度も跳ね上がると、グリフが説得しようとするが頑として聞かない。
曰く、宝玉を無くしたのはこちらの落ち度であり、自分達の主張は理に叶ったもの、だそうだ。
外に出て宝玉を使い確認を取ると、何も命じられていないから解らない。どうにかしろ、と宝玉の先にいる相手に言われた。

ディラックは私に気を使ったのかかなり湾曲な説明をした。
つまり、教会は国に責任を押し付けて宝玉を得たいから、あえて無理難題を押し付ける。生存したらしたらでその聖職者は祭り上げられて、教会も栄誉のおこぼれに預かれる。
国は責任を回避したいから、同行しろとは言わない。私達はどの道、イエスと言う以外選択肢などないのだ。それで死なせてしまったら、私達が勝手に判断した事だと言って責任を負わせる。

……理解した時は、吐き気がした。
連中の人間に対する価値観はどうなっているのだろうか？
よくもまあ、そこまで人間を駒扱いできるものだ。

私はその瞬間に同席などしたくないが、それで二人が嫌味を言われるのも癪なので、嫌悪感を押し殺して戻り、ディラックが承諾の旨を伝えた。
司祭は国が許可を出したのかと確認し、ディラックが頷いた。当然、嘘だが。
嘘だと知っている司祭は疑る様な眼差しを向けるが、それが嘘かどうかなど分かるはずもない。
選出しておくからと、明日、また来るように伝えられた。

教会を出た時、グリフがこっそり教えてくれた。
私達が背中を向ける瞬間、司祭は腐りきった笑みを浮かべていたと。
同行する聖職者はこちらの任務を妨害して来るかもしれないと、グリフが続ける。
ディラックは、それについては肯定しなかった。仮にも王子という立場上、できないのだ。
ただ、否定もしなかった。
また気が重くなった。

　スカルが詠唱すると、ケルベロスが肩から3つの顔を出してくる。が、当の本人は余裕そうだ

お人好しが褒め言葉と思ってる系の人間のようだ。

おそらくは損しても気付いていない。

抑えきれなくなったようだ。

身なりの良い女性が歩いている…。

近づくなり挨拶をした。

服装を見るなり幼馴染の事を思い返してるようだ。

　呼び方も、呼ばれ方もこだわりなどなさそうでした。傷つけたという自覚もなしに。

　浅い理解ではありますが、ちょっぴりだけは分かったでしょうか？
しかしそれでも全く自分の歩調を乱した様子はありませんでした。

　響いていないのか、マイペースなだけか。どの道素直に受け止めては居ますが。

　ないしょだよ？とそう首を傾げました。興味ないほうは、置いといてと横に置くジェスチャー。

　まったくもって、のんきなものでした。

何やら懐から取り出したメモ帳に魔王と書き込んでいる…
が、ふとペンが止まって考え込んでいる。

そこはかとなく失礼な質問である。

手元の香辛料を見て……見なかったことにした。

笑ってごまかすことにしたようだ。

と、言いながら責任転嫁をした。

獲物を収めると、小さく溜息をついた。

どかーん、どかーん