戦闘を何とか切り抜けて、一息ついて。見知らぬ……今は名前を知っているけど、ソルトという男の人と別れて。

水辺の近くまで戻ってきたぴおは痛む頭を巡らせました。さっぱり、思い出せない。
吐き気は治まり、思考は随分と澄み渡っていました。その中でぶっつり途切れている記憶には、違和感しかありません。
　考え付く原因としては、やはり初めて攻城戦に失敗した事でしょうか？　準備足らずで予想以上の大群と相対することになり、
あえなく敗走する羽目になったのですがそこまでは覚えています。逃げる道中と、次への行軍だけ覚えていません。
一体どんな伝手であの男の人と出会ったのでしょうか……まぁそこらへんは、割とどうでも良い事ですが。
　普段通りに服を脱ぎ捨てて、体に布切れを二枚巻きつければ水浴びの時間です。ここ最近では唯一と言って良いほどの癒しの時間。
それくらいぴおは消耗していました。しかしながら、水を浴びて何か口にすればどうにかまだ動けます。
動ける限り、留まるつもりはありません……

　手首に巻いていたシュシュを取り外すとき、妙な傷を発見しました。引っかき傷なのですがやたらと明瞭で、怪我といった感じではありません。
真新しいものですが、覚えはなし。はてさて、どうすればこんなしっかりとした傷が付くのでしょうか？

　そう結論付けて、パシャりと水音を立ててぴおは沈んで行きました。

　暫くの後、ぴおは水の中から抜け出て。普段通りに身支度を済ませました。

　気を引き締めて、もう負けないよう頑張る事を誓いました。

------------------------------
　水憂いと触れあい、意識を交わす内。彼女と彼女はどんどんお互いの事に詳しくなっていきました。
水憂いは元々人魚だったと言います。意識だけが憂いとして残り、他は水に溶けて消えたのだと。
どうしてそんなことになったのか？　恋に破れた人魚は、泡になって消えるだけですから。
恋敵の幸せを願いながら、彼女は人魚としての一生を終え。今も水憂いとして未練を歌っているのでした。
そんなことを話している内に、当然のようにその話題に触れました。
家族。ひととにんぎょの家族の話に接点があるのか否か。あったのです。

　ぴおの母親と、水憂いの妹の名前は同じでした。お互いに、お互いが存在する理由の一端を担っている、運命のようなものです。

そういってくいくいと飴を差し出してくる。

シュウスケはそう言うと、変身した時と同じように、バックル部分に宝玉をセットし…同時に、一歩後ろに下がる。

すると、先程までシュウスケがいた場所に、頭部を覆う強化外骨格のみが転送されてきた。

正確には転送機能だが、手品の方が分かりやすいと思ったのか、2人はそう説明する。

　
長い髪。何かあるとすぐ濡れ乾き難いそれをもつシセにとって、羨ましい話のようだ。

　

　
あ、これはやばいやつです。
わざわざ怒らせることを好んだりはしないが、この子の前では特に気をつけよう。
これはやばいやつです。大事なことなので繰り返しておこう。

　

　

　
苦笑い。眉を軽く寄せながら笑った顔が、続いた言葉に凍りつく。

　

　
無茶振りはやめましょう。

出身はお茶っ葉が育たない寒い山中の村。茶葉は行商人頼りの貴重品だったようです。

ハチミツたっぷりのビスケットに飲み物もハチミツにしてしまったら何から何までハチミツづくし。
想像しただけで口の中が甘くなりそうです。

取り出したのはみんな持っているネクターの花。
コレも確かに赤いお花です。

油断してたのか簡単に捕獲されてしまう。
寝かせてた耳がピコッと立ち上がり、驚きを表している。
それでも大きな抵抗を見せないのは、なでられるのが心地よいからか。

胸元に大人しくだかれて、ぴおの心音に耳を傾ける。
それに安心したのか、一息ついて。

龍は大儀そうに立ち上がると、廃図書館のほうに歩き出した。

龍の指差す方向には、少し荒廃した空気の路地が広がっていた。
少女の反応を気にすることなく、龍はそちらに吸い込まれるように入っていく。

顔を合わせることなく龍は聞いた。

ぐりはしばし、目を閉じて考え込み

そして魚は綺麗に捌かれてしまった