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御機嫌よう、シューノワール辺境伯殿。

夏の陽気も過ぎ去り、日に日に太陽の光が短くなると同時に肌寒い季節になってきた。
薄暗くなるのが早くなってきたが、しかし今年は実りのある年だそうだね。

収穫が多いことは、とても喜ばしいことだ。
餓えて、冬を越せない庶民の数が減ることに繋がるからね。

黄金色の畑を、喜びいっぱいに溢れた農民が収穫しているところを見るのは、
なかなか気持ちのいいものだよ。


　　　　　・　・
そう、我々にも、大きな収穫があったのだよ。



そうだね、つまらない言い回しは終わりにしようか。
単刀直入に言おう。


ミルフィーユ・オ・シューノワール…
辺境伯殿の、愛しの一人娘を我々が預からせていただいた。

無事に帰して欲しいだろう？



我々の要求は実にシンプルだ。
3日以内に、200万PSを指定の場所に持ってきて貰おう。



無論、騎士団や自警団に通報でもしようものなら………


聡明な辺境伯殿なら、ミルフィーユ嬢がどうなることか、お分かりだね？


我々は、この可愛らしいご息女の命を奪うことも、
奴隷商人に売り払う事も、
口には出せない目に遭わせる事も。


すべてにおいて躊躇しない。


もちろん辺境伯殿が、要求を素直に呑んでいただけるのであれば、
彼女の保障は約束しよう。


それでは辺境伯殿、
良いお返事をお待ちしておりますよ。


P.S.
ご息女の無事を確認して貰うために、転写魔法で写した紙を同封しておこう。
これを見て、お早いご決断をして頂けることを祈っていますよ…。



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酷い頭痛にたたき起こされるかのように、鉛のように重たい瞼が開かれる。

どうやら深く眠っていたらしい。
そこで初めて、重苦しい悪夢を見ていたのだということを理解した。

頭を押さえながらあたりをゆっくりと見回すと、
まだあたりは暗闇に包まれている。


一体、いつの間に眠ったのだろう？

眠りについたときの記憶がない。

眩暈がするほどの頭痛に、もう一度体を倒して、
ゆっくりと記憶を反芻する。

ゆっくりと。
冬に凍りついた雪が、春の陽気にサラサラと溶けていくかのように。

記憶が、徐々に鮮明になっていく。

のに。

少しずつ。少しずつ。

無意識のうちに、頭の奥底に閉じ込めようとしていた記憶が、
ぎしり、ぎしりと軋んだ音を立てて、滲み出す。

———【人狩り】。

このような世の中だ。
弱者を食い物にする人がいても、おかしくはない。

だが。
心のどこかで、「自分は大丈夫」…などと、思っていたのかもしれない。

突きつけられた残酷な現実に、体が竦み…
頭は、氷水を浴びたかのように凍りついた。


深く、激しい、恐怖心……。

それはミルフィーユの封じていた過去を、
嫌でも引き摺り、掘り起こされていた。


沈みゆく太陽を背にしながら、
従者の目を盗んで一人で遊んでいた時に、
無骨な腕に、引きちぎられるかのような力で連れ攫われた時の、忌々しい記憶。

吐き気を催すようなフラッシュバックと共に、
怒号が混ざり合い、血と泥に塗れた戦いが始まった。


頭の中がぐちゃぐちゃとかき乱され、一体どうやって、どんな動きをして、
そして今の今までどうやって動いていたのかも、
酷く混乱して思い出せない。


ただ———


唯、一つだけ覚えているのは。

薄れゆく意識の中で聞いた、憎しみと、悲痛が込められた声。



———くっ、殺せ……———

その一言だけは、確かに耳にした。

頭痛なんて、構っていられない。


ぼんやりとしていた意識は覚醒し、かわりに、
ぞわりとした言いようのない恐怖が這い上がる。


よろける体で、必死に。
その姿を探して、宵闇に足を踏み入れた。

マリナは自分の右手にだけ嵌めているグローブにちらりと視線を向けた。
人差し指以外の指がむき出しになっており、手の甲の部分に緑色のクリスタルが取り付けられている。
　

ＰＬ注：前回のメッセでMademoiselleの略称が間違っておりました。
　　　　申し訳ございませんでした。

意味ありげな視線をシロに送り、気まずそうに外した。

そこで、一揆の参加者ではない、という話を聞いて。

この少年は、元の世界の帰る為の手掛りを探しているのだ。

戻された鉛筆をじっと見る。

そこでぬっと赤い布で顔を覆った少年…青年との間あたりだろうか。そんな男が影から飛び出すかのように現れる。

もうキャッキャウフフというかそういう事＝戦闘と見られててため息をついている。

ネタにマジレスな勢いだった。

　微妙にかみ合いませんね。

　それはコイツだけではなかろうか……

　二人の少女に頭を下げて、ゆるゆるとちっこいのは去っていきました

人狩りに敗れた2人の元へ荷物が届く。
差出人にはとある商人の名。

『気高きお嬢様と忠実なる従者様へ。

　御身体大丈夫で御座いましょうか。
　
　大変な目に遭われたと伺いました。

　力無き身には何も出来ませぬこと大変心苦しく。

　せめて香りにて心を癒して下さいませ。

　落ち着かれたらお顔を拝見に参ります。

　
　　　　　ナンテ＝リオルグランテ＝キーン』


　優しい紙で包装された荷を紐解けば花の香りが鼻腔をくすぐるだろう。先日渡した薔薇、それにラベンダー。更に紙に包まれてクチナシ、3種の小さな石鹸が入れられている。クチナシは香りが強すぎる為に別包装らしい。商人なりの気配りといったところか。後日、改めて現れるようだ。

(メッセージ、次回へと続きますので今回は返信不要です)

そう言ってヒナカは手にしていた金属棒の柄に何事かをささやく。
すると金属棒の先端ががちゃがちゃと音を立てて変形し、棒は槍へとその姿を変えた。