私は、エンブリオと契約している。

闇の精霊である、カディエ。

水の精霊の契約を結んでいるヴィオラ

土の精霊の契約を結んでいるペテロ

ペテロの力を使って　ゴレムを
ヴィオラの力を使って　パロロコンを
そしてペテロとヴィオラ、二人の力を使ってアルラウネとも契約を交わしている。

また、最近ではゴレムの力の派生、鉱物関連のアルミ・カーンとも契約した。

カディエとの契約は、幼少の頃にやったことを記憶している。
ヴィオラ、ペテロも村にいたときから契約自体は結んでいた。


ただ、契約の記憶のない精霊が、一人だけ居た。


（……間違いなく、契約は結ばれているけれど……）

記憶に僅かに残る　『忘れたものを思い出さなくてはいけない』　という意識。



真紅の精霊、名も知らぬエンブリオ。



（恐らくだけど、このエンブリオが何かの鍵にはなっていると思う。）

しかし、このエンブリオを呼ぼうにも名前も知らない為に呼ぶことは出来ない。
力の行使もカディエを経由する形で取り出して———


………？


何か、物凄い見落としを、している気がする。

「………なんだろ。」

口に出しても、何も変わらない。

ピン、とメルンストゥーラ　——　十二番目の『十字/生贄』を刻むコインを指で弾く。

くるくると球体を描くように回転していたが、やがて十字を上にパタンと倒れこむ。

指で起こして、そのまま押し返す。

儀礼剣を刻んだ面を上に指でなぞる。


「生贄……か」


切り刻まれたようにボロボロの記憶に残るあの一時が真か嘘かも判らない。

判らない、が。

重要性だけは心で理解していた。

それは、無意識のままに。

髪を結い上げて、上着を羽織る。
グレイマンの言っていた”店”は少しばかり入り組んだ先にあったはずだ。

彼と合流するにしても、早いことに越したことは無いだろう。

そうして、手早く持っていくものを選別してポケットに入れていく。


「————」


机の上を整理しているうちに私の前に出てきたのは、赤いジッポライター。
開いて回してみれば軽い音と共に火が灯る。

間違いなく、ただ紛れ込んだのではなく自分が『持って　使っていた』ライター。

そうだ、必要があるわけでは無い。
持っていく意味は無い。


だから———………だから？



「………」

取る必要は無い。　記憶にない、この道具を、持っていく必要は———





『鍵』を、握り締めた。

フライバイをチラッと見る。

へぇ、と関心したような声を上げる。

特に答えを求めるでもなく、問われた言葉に答える。

ペット、と聞こえたような気がしたが、
さすがに気のせいだろうと思い、
深くは追求しないビブリオバベルであった。

あなたの話を聞きながら相槌をうち、
ビブリオバベルは少し考えこんでから、答える。

〜リレッタさんのキッチン〜

　　　　　◎
　　◎　　　　◎
　　　　　◎
　◎　◎ 　◎　 ◎　ティウンティウンティウンティウン
　　　　　◎
　　 ◎ 　　　◎
　　　　　◎

説明しよう！　カレー妖精は急に叩いたりするとティウンティウンするのである！

それにしてもナベから出たら即ギロチンアタックって初見殺しってレベルじゃないですね。
クイックマンステージみたいです。



〜アムルの部屋〜

なんか点滅しながら上からぽとって感じで落ちてきたノノを、ちらっと見て挨拶するアムル。
なお点滅してる間は無敵なので攻撃は効きません。

そんな調子で、いつもとまったく変わりません。
カレーを作らせてくれた嬉しさが大きいので、とくにその後のことは気にしてないのでした。

羽が膨らんでいつもより丸く見えるかもしれない。
それでものんびりとした動作で、首を傾げながらリレッタの顔を覗き込み、
周囲にレグルスの姿が無い事を確認する。

飛び回るカディエを追うカミユの眼差しは穏やかだ。
天使の方は、気がつくとまたその姿を消している。あまり気にすることもないだろう。

先に言われた通り、１０分程度の間を置いてオーブンを開ける。
湿った厚い布越しとはいえ、今の今まで灼かれていた大皿は当然熱い。
あち、あちと繰り返しながらテーブルに運び、一息。

声をかけられた事に気付き、振り向く。
きょとんとしていたが、アイドルとしての自分に話しかけられていると理解した途端、アイドルらしく可愛い笑顔を作り、答えた。

差し入れを受け取り、がさがさと包み紙を開けて中身を見る。

彼女はそう言うと、あなたの手のひらに小型の黒いタブレット…携帯電話を手渡した。ついでに予備のバッテリーと手回し式充電器もついている。

そう言ってあなたの姿を上から下まで見ている。特にスタイルのいい胸元や腰のラインは、見た時に少しだけ嘆息を漏らしているかもしれない。

ぶつかって怯みつつも、倒れるには至らず。
長身の貴女を見上げるようにカカ、と笑い呼びかけに応える。

明らかにそこまでは言ってないが貴女の態度を誇張するように、挑発気味に。

漂う煙を嫌がる風でもなく、むしろ匂いを嗅いでニッと笑い

無言で巨大な中華包丁を握っている……。

薄く血の付いた包丁を振り払う。

村では、大体鬼ごっこやかくれんぼ等、道具を使わない遊びはした事はあったが
”缶蹴り”　という遊びは初耳だった。　機会が無かっただけではあるが。

とりあえず、皆が話す内容に耳をそばだてておぼろげながらルールを察する。

とか何とか考えてる間にじゃんけんが始まる…！

フライバイが取り出したよくわからない缶的な生き物？エンブリオ？道具？を見ながら、一体今度は何を行うのかと不安げに声を発する。
普段言葉を教えてもらっているフライバイやクリストファーに助けを求めるような目線を向けたり、カミユの服の袖をくいくい引っ張って何をすればいいのか助言を求めたり。

ジュリ、と声をかけられ、グーだのチョキだのを見ればとりあえずじゃんけんをするのだということは理解できたようだ。うんうんっ、と何度も頷いて手を出した。

手を前に出せばグーチョキパーと形を作り。リズムぐらいは言葉はなくてもいけるだろう。多分。

…缶の存在しない山村育ちのカミユは、どうやら缶けりを知らないようだ。
服の裾を引く樹里とフライバイを交互に見、何も応えられずに動向を見守る。

　　　　　　　　　・　・　・　

声の聞こえた方に向けると、缶けりをしようだのじゃんけんだのとフライバイが騒いでいる。

混ざる気もなさそうに、輪の中央から抜けて端によった。