ビブリオバベルは、無事に仲間たちと再会した。





昨日、命からがら落ち延びた砂地。
そこで互いの無事を喜び合う。
ビブリオバベルはクリシュナに抱きつき、泣いた。
それは安堵からの涙だったのだろう。
みっともないとは思ったが、
感情の昂ぶりを抑えられなかった。
クリシュナもそれを拒まず、静かに抱きしめ返してくれた。

それを見て、フェルハトとヴィクラムは、
ホッとしたような顔をしていた。






そして夜を迎えた。砂地の夜は冷える。
防寒用の布を身体に巻きながら、
ビブリオバベルは地面に横たわり、空を見上げる。

空気が澄んでいるからだろうか、
天には眩い星々の輝きが視えた。
それは、夜のないアカデミエでは視ることのできないもの。

生の過酷さを知ってこそ、
生の喜びを本当の意味で実感することができる。

ビブリオバベルは、そう考えている。
その意見を、より一層強めるできごとだった。
たとえ苦しく辛いことがあっても、
決してそれだけじゃない。希望はある。
そのためにも……苦しく辛いところを、
乗り越えられるように、一層力を付けなければならない。
そうでなければ、私の人生は、
ただ逃げ続けるだけのものになってしまう。
この先は、逃げずに、立ち向かいたい。

美しい星の瞬きを視界に焼付けようと、
ビブリオバベルはじっと夜空を見つめた。

いつしか眠りについていた。

＞ローラス

（ぶん、ぶんとおおげさにうなずき）

＞ビブリオバベル

（ス、と指をさすように、ビブリオバベルの前に手を持ってくる——
　もしもビブリオバベルが顔を近付け、避けなければ、そのままその手でデコピンをするだろう
　その襲撃が成功にするにしろ、しないにしろ、身を翻し）

そう言って、男は大切そうに飾板を撫でた。

ビブリオバベルの声に驚いたように、少し体が跳ねる。
どこかきょとんとした顔で、彼女とコインを見比べる。

飾板と違い、そちらは興味が無いような、軽く納得したような顔で、手の中のコインを弄んだ。

そう言いながら、クロムは右手の人差し指に光る紅い石のついた指輪を見せた