鈍い銀色に輝く調理台の上。塩ゆでされたテリメインシラスとテリメイン水牛のブッファラが並んでいる。 事前情報として聞いていたシラスと水牛。 妹には優先的な試食をお願いしていたし、市場には行けなくともこれだけは手に入れるようにしていた。 水牛の肉よりは、まず馴染みのある方ということでブッファラをチョイスした。 「……ん……」 それぞれ一摘みづつ口に運んだ妹が、小さく頷いた。 品質には問題ない。 新鮮でむしろ上質な方だ。 「……で、何を作る？」 「ブッファラはやっぱりカプレーゼとか……あとは、アリゴなんてどうかな？」 妹の問いかけに返したのは、相性のいいトマトを利用したイタリアの料理。 次いで思いついたのは、中南部の郷土料理だ。 じゃがいもと合わせることで、粘度の高いもちもちとした食感になる。 そのまま一品として出しても良いし、料理の付け合せにも使えるだろう。 「カプレーゼはともかく……ブッファラでアリゴ……？」 「トム・フレッシュはこっちに取り寄せるには時間がかかりますからね。 こっちで手に入る食材に置換えていけば、色々と問題も解消できるかなって」 「……やってみないとわからないね。美味しく作って」 そんな妹の言葉に力強く頷き返す。 さて、もう一つの食材はどう調理したものか。 「シラスの方は……この食感と旨味を活かすには……」 白く茹で上がったシラスを一摘み口に入れる。 ふわふわした感触とほのかな甘味。 どんな一皿が作れるか、思いを巡らせながら冷蔵庫と食材の棚を開けた。 調理台へと抱えて戻ってきたのは、卵にじゃがいもバターに生クリームだった。 「こっちのじゃがいもはepulucherしてからjulienneでお願いします。 ブッファラはdes。 にんにくもraperしておいて」 持ってきたじゃがいものうち半分の皮を剥いて千切りに。 ブッファラを角切りに、にんにくはすりおろす。 そんな風に指示を出しながら、残ったじゃがいもの皮を剥き２センチの厚さに切り揃えた。 一度水でデンプンを洗い流してから、72度に温めたお湯の中へとじゃがいもを漬ける。 「はいはい……」 指示に従い淡々と手を動かしながら、妹が思い出したように口を開いた。 「……そういえば、こっちで食べた料理は随分と味が薄かったな。 さっぱりした仕上げの方がここの舌には合うのかも」 「温かい方は薄味に、寒い方は濃い味付けになるって言いますからねー。 探索者の人とバカンスの人でも求める塩分量は違うだろうし、難しいところだね。 客層を見て調整していくしか無いかなぁ」 出身の他にこの世界での目的によって求める味付けが変わってくる。 バカンスを楽しんでいる人はもちろん、肉体労働と頭脳労働の後でも変わるだろう。 「ウチも濃い方だったしね。 アタシの地元は特に……だったよ」 「お酒に合わせるとなると、濃いめの方が良いんでしょうね。父さんの味の好みだっただけかもしれませんが。 私の所はお上品な方が多かったので素材の味が～って感じでしたね」 二人の父親は酒好きだった。 特にビールが好きだったことが、メニューに良く現れている。 「あ、じゃがいもにシラスとパルミジャーノ・レッジャーノそして、オリーブオイルと塩コショウを加えてmelangerしてね。 もうおわかりでしょうけど、ガレットです。 後は、バターで焼き上げちゃってください」 話しながらも手は止めず、材料を混ぜ合わせた後に円形に焼き上げるように指示を出した。 自らの手元では卵、塩コショウ、バターをボウルに加え、湯煎にかけて加熱しながら泡立て器で撹拌する。 「そういうのは最初に言え。 パルミジャーノ・レッジャーノ、一番若いやつでいいよね？」 「あはは、ごめんなさい。 最初に教えちゃったら、楽しみが減っちゃうかなって。 ええ、そうですね。若いのは料理に、熟成を重ねたのはそのままでお出ししましょう」 不満げに言いながらも手は止めない妹へと笑いかけながら、小さく息を吸い込む。 バターとチーズの溶ける香りを嗅ぎながら、夕食がまだだったのを思い出す。 美味しく出来上がるように、気合を入れて卵を割った。 「お手伝い相手にサプライズしてどうすんのさ……」 困ったような疲れたような声を漏らし、妹は溜息をついた。 困っている妹はかわいい。 可愛いからつい困らせるような事を言ってしまうのだ。 かわいいのが悪い。 「火まで通すと、地元のシラスとほとんど違いも分からないだろうな……」 「でも、このシラスは釜揚げシラスって言って揚げたて新鮮なシラスを茹でたものらしいですよ。 ふわふわしてます。ふわふわ」 ボウルの中に、卵、塩コショウ、バターを加えて湯煎にかけながら、先程口にしたしらすの食感を思い出す。 あの生臭さの無いふわふわとした柔らかさは新鮮なものならではなのだろう。 「にしても、腹が減った。美味しく作ってね」 「ええ、おまかせください。愛情を込めて美味しく作りますから」 「期待してる。仕事が始まったら、しばらくはゆっくり夕食もとれないだろうしね」 「そのあたりは料理人の宿命でしょうね。 美味しい料理を作って、美味しい料理が目の前にあって、空腹で。でも食べることが出来ない」 料理人というのはなんとも難儀な職業である。 「せめて賄いを食べる暇は欲しいもんだよ」 お湯に浸していたじゃがいもを水に晒した後に茹でつつ、卵のボウルの方へ手を伸ばす。 しらすと生クリームを混ぜて、卵の殻へ盛り付ける。 「そっちもいい匂いですねー」 焼きあがったガレットの香りを嗅ぎながら、茹で上がったじゃがいもを裏ごししたものを弱火に掛けて水分を飛ばす。 それと同時に、別の鍋ですりおろしたにんにくとバターに火を通す。 ブッファラとパルメザンチーズ、生クリームに塩コショウを加え、チーズが溶け始めたところでじゃがいもを追加して滑らかになるまで練り上げた。 「さて、これで出来上がりですね。 早速味を見てもらっていいですか？」 「……ん」 アリゴをスプーンでひとすくい、口に含んで無言で頷く妹の顔をじっと見つめる。 無言のまま棚から皿が引き出され、並べられていく。 「これから先の味見は、食卓で……どう？ 夕食にもいい時間だ。味見でガレット崩したくないしね。」 「そうですね、それじゃあ運んでもらって良いですか？ 私はこれ焼いて持ってきますんで。」 どうやら、合格点は貰えそうだ。 先に皿を運んでもらい、トーストを焼き上げる。 グラスに水を注いでから食卓へと向かう。 テーブルの上には料理が並べられており、妹はすでに席についていた。 「……美味しい」 卵を口に運び、そう漏らした妹。 つい、笑顔がこぼれてしまう。 「シンプルだけど……いいね。 アタシだったら、シラスは散らさず閉じ込めるかな。 何かハーブを乗せてもいいかもね。 あとで時間頂戴。これベースにレシピ作ろ。 工程、もうひと押し簡略化したい」 「ありがとうございます。 後で色々試してみましょうね」 妹の感想を聞きながら、幾つもの改善点を頭のなかで出していく。 思いつくものを試す、そしてまた改善点を出す。 そうしてレシピは洗練されていくのだ。 「……参ったな。 せっかくの夕食だってのに、結局こういう話になっちまう。 職業病ってやつかね」 「ふふふ、シオネちゃんは真面目ですからね」 そんなところが可愛らしくて愛おしい。 そんな言葉を口にすれば、また呆れられるだろうか。 「それじゃあ食べ終わったら一緒にレシピを詰めようか。 頑張りましょうね、シオネちゃん」 テーブルに並んだのは三品。 円形に焼き上げられ、焦げ目とチーズの香りが食欲をそそる『テリメインシラスとじゃがいものチーズガレット』 塩を土台として立てられた卵の殻に盛り付けられ、四分の一に切ったプチトマトを添え、上からシラスをふんわりと振りかけられたのは『釜揚げテリメインシラスのウフ・ブルイエ』 スプーンですくえばとろーりと伸びる、もっちりとした食感が特徴の『テリメイン水牛ブッファラのアリゴ』 この世界に来て二日目の夜。 La Belle Cyoneに新しい三つのメニューが誕生した。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

オリナは、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

穏やかな潮の流れに、時に身を任せ、時に原生生物を相手にし、
確実にテリメインの探索へ進んでいたオリナは、
前方に大きな泡に包まれたドーム状の建物を発見した。
近くの岩に、建物の名前が彫られているのを確認できるかもしれない。

	テリメイン最先端探索拠点

……どうやらここが、海底探索協会の最先端拠点らしい。
これよりドームから先は、いよいよ未知なる海域が待っているのだろう。

誰も見たことのない財宝。
誰も発見したことのない未知なる生物、海底遺跡。
己の力をつけるため、願いを叶えるため……。

様々な目的を胸に秘め、各地から集まった探索者たちは旅立っていく。

テリメイン最先端探索拠点は、そんな夢を秘めた冒険者たちに、
最先端のスキルストーンやチューンジェムを揃えて販売している。

この拠点より先は、海底探索者協会の目が届かない海域だ。
【海賊】と呼ばれる者たちに襲われる危険性もあるかもしれない。

未知なる海域へ足を踏み入れる前に、ここで十分に準備をしてもいいだろう。

オリナは周辺を探索…………。

焼き魚を手に入れた！

オリナはSSシェルボックス(低)を購入した。

オリナはSSシェルボックス(低)を購入した。

オリナはSSシェルボックス(低)を購入した。

オリナはSSシェルボックス(低)を購入した。

オリナはTGシェルボックス(低)を購入した。

オリナは精神を訓練した。
オリナは体力を訓練した。
オリナは精神を訓練した。
オリナは体力を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
オリナは精神を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

オリナはアイテムNo.4 ウォークライを私有化！

オリナはアイテムNo.8 エアロシュートを私有化！

オリナはアイテムNo.14 チャージを私有化！

目的の決定