～前回までのお話～ 森に棲む兎耳の種族、イルヤは自らが作ったゴーレムに乗り込み、知識を求めて外の世界へと飛び出した。しかしその先に待っていた人間の社会に順応することは簡単ではなかった。 ～～ 人の言葉は自宅の書庫の奥にあった本であらかじめ学習しておいた。文化のことも調べた。森の民は外界のとの接触を禁じているはずなのだが、そうした書物は存在していたのだ。それが何故なのかは後々調べなければと思いつつ、イルヤは目の前の問題…お金、食糧などなどを手に入れる方法を見つけなければならなかった。 物々交換に使えないかと家から色々な装飾品を持ってきたものの、人の方の反応はいまいち。別の店ではセクハラまがいの言葉をかけられ、早々につまずきつつあったが、そんな時一枚のチラシが目に入った。 「テリメイン…？探索者募集のお知らせ……？」 声に出して文面を読んでいると、奥にいた店主らしき男が声をかけてきた。 『ああ、そいつは何だか最近海で見つかった未開の地域らしくてね。調査のために人を募集してるんだと。』 「ふうん、そんなところがあるのねー…」 『何でもその海の底には遺跡があってすんごいお宝が眠ってるだとか、未知の生物がいるだとかで噂が立って人が押し寄せてるみたいだなあ。ま、どこまで本当なのかは分からんがね…おや』 店主が話を終える前に、イルヤはチラシを握りしめて走り出していた。 「お宝を見つければお金になるし、知らない生き物もいるみたいだし、一石二鳥じゃないっ！！」

http://p.twpl.jp/show/orig/yMsqn　（今回の絵日記みたいなものです）

海だーっ！！

ゴーレムを駆り、チラシに載っていた地図を頼りにテリメインまでやってきたイルヤ。はじめて見た海の光景に目を丸くする。どこまでも続く水平線に期待は膨らむばかりであった。 ふと眼下を見下ろすと、ぽつんと建った館のようなものとそれに群がる沢山の人だかりが見える。

あれが、海底探索協会かなー…

集まっている者は皆、イルヤと同じようにこの海の噂を聞きつけてやってきた人々と見て間違いないだろう。それを思うと途端に不安になってくる。 もし本当に宝があったとしても、あれだけの人数が押し寄せたら奪い合いになるのではないか。混乱が起きれば生き物や遺跡も探してる場合ではなくなってしまう。独りで故郷から出てきたイルヤには頼れる知り合いがいるはずもなく。

どうしよっかなー。うーん、ううーん……

独りで腕組みをしながら悩んでいる背後から、ふっと誰かの声がした。 『ごきげんよう。そこのあなた、ちょっと良いだろうか』

イルヤはアイテムNo.4 シェルボックス（低） を使用した。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

イルヤは、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。