調理台を見る。 塩ゆでされたテリメインシラスとテリメイン水牛のブッファラだ。 踊り食いもハンバーグも作れないが、こればかりは仕方ない。

シオネ「……ん……」

よく知った味に、かなり近い。 シラスはその前に生食をしていたので、ほぼ予想通りの味だが、ブッファラの方もほぼ、地元と同じ味だ。これなら扱いやすい。

シオネ「……で、何を作る？」

オリナ「ブッファラはやっぱりカプレーゼとか……あとは、アリゴなんてどうかな？」

シオネ「カプレーゼはともかく……ブッファラでアリゴ……？」

在庫とにらめっこをする日々が長かったせいか、多種のチーズを扱う料理には敏感だ。 チーズは単品でも金になるし、補充がとても難しい。今となっては、贅沢に放出するには勇気を要する食材だ。

オリナ「トム・フレッシュはこっちに取り寄せるには時間がかかりますからね。 こっちで手に入る食材に置換えていけば、色々と問題も解消できるかなって」

シオネ「……やってみないとわからないね。 美味しく作って」

オリナ「シラスの方は……この食感と旨味を活かすには……」

考え込みながら、冷蔵庫を開き…… 卵、じゃがい、バター、生クリームを抱えて戻ってくる。

オリナ「こっちのじゃがいもはepulucherしてからjulienneでお願いします。 ブッファラはdes。 にんにくもraperしておいて」

シオネ「はいはい……」

淡々と手を進めながら、ふと思い出したように口を開く。

シオネ「……そういえば、こっちで食べた料理は随分と味が薄かったな。 さっぱりした仕上げの方がここの舌には合うのかも」

オリナ「温かい方は薄味に、寒い方は濃い味付けになるって言いますからねー。 探索者の人とバカンスの人でも求める塩分量は違うだろうし、難しいところだね。 客層を見て調整していくしか無いかなぁ」

シオネ「ウチも濃い方だったしね。 アタシの地元は特に……だったよ」

オリナ「お酒に合わせるとなると、濃いめの方が良いんでしょうね。父さんの味の好みだっただけかもしれませんが。 私の所はお上品な方が多かったので素材の味が～って感じでしたね」

繊細な現代料理は、あくまでも一つの側面に過ぎない。 地元は辺鄙で歴史の長い村落だ。 大衆向けにアレンジされた料理とは一線を画すその力強さは、魅力でもあるが、ともすると癖が強いとも言われる。 だが、それは決して素材の味を隠すための味付けではない。 むしろ、素材の前面に押し出した結果。その濃さこそが自信の現れなのだ。

オリナ「あ、じゃがいもにシラスとパルミジャーノ・レッジャーノそして、オリーブオイルと塩コショウを加えてmelangerしてね。 もうおわかりでしょうけど、ガレットです。 後は、バターで焼き上げちゃってください」

シオネ「そういうのは最初に言え。 パルミジャーノ・レッジャーノ、一番若いやつでいいよね？」

温まったフライパンの上に、混ぜ合わせた材料を乗せる。

オリナ「あはは、ごめんなさい。 最初に教えちゃったら、楽しみが減っちゃうかなって。 ええ、そうですね。若いのは料理に、熟成を重ねたのはそのままでお出ししましょう」

シオネ「お手伝い相手にサプライズしてどうすんのさ……」

疲れる。 姉はこちらの反応を見て楽しんでいるのだ。今も嬉しそうな顔でこちらを見つめている。 いちいち相手取ってはいけない。無視だ。

シオネ「火まで通すと、地元のシラスとほとんど違いも分からないだろうな……」

オリナ「でも、このシラスは釜揚げシラスって言って揚げたて新鮮なシラスを茹でたものらしいですよ。 ふわふわしてます。ふわふわ」

シオネ「にしても、腹が減った。 美味しく作ってね」

オリナ「ええ、おまかせください。愛情を込めて美味しく作りますから」

愛情という言葉に何か引っかかるものを覚えつつも、そこは聞かなかった事にする。 姉の言動を深く考えてはいけない。

シオネ「……期待してる。 仕事が始まったら、しばらくはゆっくり夕食もとれないだろうしね」

オリナ「そのあたりは料理人の宿命でしょうね。 美味しい料理を作って、美味しい料理が目の前にあって、空腹で。でも食べることが出来ない」

シオネ「せめて賄いを食べる暇は欲しいもんだよ」

フライパンを転がしながら独り言ちた。 食欲をそそるチーズの香りが、上の換気口に吸い込まれてゆく。

オリナ「そっちもいい匂いですねー」

そう言う姉の方からも、良い香りが立ち込めてくる。 バターやにんにくを含むチーズの香りが、ストレートに食欲を刺激してくる。 その発生源は、姉のフライパンに乗っている餅のような食べ物だ。

オリナ「さて、これで出来上がりですね。 早速味を見てもらっていいですか？」

シオネ「……ん」

アリゴをひとすくい、口に含んで無言で頷く。 ブッファラで作られたアリゴは初めて食べるが、確かに悪くない。 コンテ、グリュイエール、エメンタール……キルシュヴァッサーなどを加えても美味しいかもしれない。 アリゴという名には馴染みがないかもしれないが、とてもシンプルでわかりやすい美味しさの料理だ。 フレンチに親しみのない人にこそ、敷居を下げるためにも食べて欲しい一品である。 写真か注釈か……何らかの情報を添えた方が、売れ行きに繋がるだろうか。

シオネ「これから先の味見は、食卓で……どう？ 夕食にもいい時間だ。味見でガレット崩したくないしね。」

皿を二人分ずつ引き出し、並べていく。

オリナ「そうですね、それじゃあ運んでもらって良いですか？ 私はこれ焼いて持ってきますんで。」

そう言って、トーストを焼き上げつつグラスに水を注いでから食卓へと向かった ＊　＊　＊

シオネ「……美味しい」

卵の殻に包まれた、小さなアントレを一口。 卵の上にはプチトマトが添えられ、ふんわりと振りかけられたシラスが仄香る。 とろけるような食感、シラスと卵の仄かな甘みがふわりと広がり、そのハーモニーをトマトの酸味が引き締める。

シオネ「シンプルだけど……いいね。 アタシだったら、シラスは散らさず閉じ込めるかな。 何かハーブを乗せてもいいかもね」

シオネ「あとで時間頂戴。これベースにレシピ作ろ。 工程、もうひと押し簡略化したい」

オリナ「ありがとうございます。 後で色々試してみましょうね」

コストを下げ、提供時間も早めたい。 さらに、経験が浅い者でも再現できるようなものに落とし込む。 仕込みの工程と、分量と、価格と…… 考え始めたところで、はっと現実に戻る。

シオネ「……参ったな。 せっかくの夕食だってのに、結局こういう話になっちまう。 職業病ってやつかね」

オリナ「ふふふ、シオネちゃんは真面目ですからね」

少しばかり不本意な言葉だが、確かにそうなのかもしれない。 姉が、かわいいものを見つめる目をしている。 何か不快なことを考えていそうだが、見なかったふりをする。

オリナ「それじゃあ食べ終わったら一緒にレシピを詰めようか。 頑張りましょうね、シオネちゃん」

テーブルに並んだのは三品。 円形に焼き上げられ、焦げ目とチーズの香りが食欲をそそる『テリメインシラスとじゃがいものチーズガレット』 塩を土台として立てられた卵の殻に盛り付けられ、四分の一に切ったプチトマトを添え、上からシラスをふんわりと振りかけられたのは『釜揚げテリメインシラスのウフ・ブルイエ』 スプーンですくえばとろーりと伸びる、もっちりとした食感が特徴の『テリメイン水牛ブッファラのアリゴ』 この世界に来て二日目の夜。 La Belle Cyoneに新しい三つのメニューが誕生した。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

シオネは、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

穏やかな潮の流れに、時に身を任せ、時に原生生物を相手にし、
確実にテリメインの探索へ進んでいたシオネは、
前方に大きな泡に包まれたドーム状の建物を発見した。
近くの岩に、建物の名前が彫られているのを確認できるかもしれない。

	テリメイン最先端探索拠点

……どうやらここが、海底探索協会の最先端拠点らしい。
これよりドームから先は、いよいよ未知なる海域が待っているのだろう。

誰も見たことのない財宝。
誰も発見したことのない未知なる生物、海底遺跡。
己の力をつけるため、願いを叶えるため……。

様々な目的を胸に秘め、各地から集まった探索者たちは旅立っていく。

テリメイン最先端探索拠点は、そんな夢を秘めた冒険者たちに、
最先端のスキルストーンやチューンジェムを揃えて販売している。

この拠点より先は、海底探索者協会の目が届かない海域だ。
【海賊】と呼ばれる者たちに襲われる危険性もあるかもしれない。

未知なる海域へ足を踏み入れる前に、ここで十分に準備をしてもいいだろう。

シオネは周辺を探索…………。

海ブドウを手に入れた！

シオネはSSシェルボックス(低)を購入した。

シオネはSSシェルボックス(低)を購入した。

シオネはSSシェルボックス(低)を購入した。

シオネはSSシェルボックス(低)を購入した。

シオネはTGシェルボックス(低)を購入した。

シオネは魔力を訓練した。
シオネは敏捷を訓練した。
シオネは魔力を訓練した。
シオネは敏捷を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
シオネは魔力を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

シオネはアイテムNo.3 ブレスケアを私有化！

シオネはアイテムNo.8 グラビウォーターを私有化！

シオネはアイテムNo.9 ジェリーフィッシングを私有化！

目的の決定