『千年の眠り』は砂漠の国に伝わる
民話や伝説を紹介している物語集である。
原典はとても長く、また色々と難しいために
児童向けとして抄録版が存在している。

『抄録　千年の眠り』

〜序章〜

ある日、砂漠の国に魔王が誕生した。
魔王は元々人間の王だったが、王妃を殺してから人が変わった。
その後も、魔王は次々と娘をさらっては喰い殺していた。
それは何年も何年も続き、人々を悩ませた。
しばらく経った頃だった。
一人の若い巫女が、魔王のいけにえに捧げられた。
その夜、魔王が巫女を食べようとすると、
巫女は不思議な話をした。
魔王はそれに聞き入った。

〜終章〜

巫女の話は全て終わった。
魔王が目覚めてから、ちょうど千年の時が過ぎていた。
彼は、巫女の話を長い間聞いていた。
巫女は喰い殺せなかった。
だが、それと同時に心地よい眠りが彼のもとに訪れた。

END


おはよう、エメリー。
昨日は悪かった。この本、途中まで読んだのか。
ははは、お前も大魔王様みたいに寝てしまったのか。
冗談だよ。そんなに怖い顔するなよ。

無茶な姿勢で抱えあげられて、暫く我慢してたが。

したら実力行使する前に、猫が認め(勝手に)任命した毛糸玉係の下僕は奇声を上げ、猫を離した。

物好きにも水浴びを始めた毛糸玉係を、所在無げにちょい離れた場所で見守る黒猫。

懸命にノミトリシャンプー頑張ってる横で、猫ニャーニャー煩い。

祭りの終わり際、通りすがりに麦わら帽子と三つ編みの、
どこかで見たような傷のある男の人とすれ違いざまに、不可思議な声を掛けられて驚いて。

「どうしたのだー？あ、あの人なのだよー、このお面売ってたおじちゃん！」

相方の兎人、セシルが去っていく麦わら帽子の男を見ながら、
にこにこと顔の横につけている夏祭りのお面を指差して。

気づいたレイは、SANチェックが入ったとか、入らなかったとか。