昔の日


「中学上がったら、離れ離れだね」
「うん」
「一人でやっていける？」
「たぶん」
「多分…って…」
「解らないよ。私、知らないもん」
「ん、まぁ、ね」
「××こそ…これからどうするの？」
「どうするって？」
「どうするってその…中学上がった後…」
「まぁ…適当に…適当に勉強して…適当に生きて、適当に高校に行く、と思う」
「……」
「何？」
「それで、適当に大人になって、適当に死ぬの？」
「…まぁ、そう、かも」
「それって、私達が一番しちゃいけないことだよ」
「……」
「だってさ、おかしいじゃん。三人とも。三人ともだよ。悪くないのに、こうなってさ。都合が良すぎるんだよ、この世界は。私達以外に。許されないよ、そんなの」
「鳴子…」
「それって、負けるってことだよ。いいの？この世界で適当に生きるって、それって私はこのままでいいって言ってるようなもんだよ？不幸なままでいいって」
「…仕方ないじゃん」
「仕方なくないっつーの！！」
「ハァ！？なんで私が鳴子にキレられなきゃいけないのよ！！私だって、私だって本当はねぇ…！」
「そうだよ、それでいいんだよ…私さ、戦うよ。もう、これしかないよ。この腐った世界を変えるには」
「…戦うって、どうやって？」
「殴る」
「なぐ…プッ、アハハハ！ごめん、アー、変わらないね。鳴子、ほんとに」
「だって、どんなに叫んだって無駄じゃん。叫んで無駄なら殴るしかないよ」
「くっふふ…私は鳴子みたいには生きられないや。でも、応援してる。うん。あっ、そうだ、ちょっと待って…」
「？」
「はい、これ」
「これって…」
「欲しがってたよね？これ」
「…お金」
「ん？」
「お金ないのに…」
「いいんだよ、そんなの」
「ありがと…早速被ってみるね…どう？」
「似合う」
「えへへー…本当に魔女になった気分」
「…いつかさ、本当に魔女になってこの世界を変えてみてよ。私、応援してるからさ」
「うん」
「絶対だよ？」
「うん、約束する。そしたら、××にこの帽子を——・・・」