◇エンブリオについての記述

・ラウ
妖猫。恐らく長生きした猫が妖怪化した存在。
見た目は中型の、大人になったばかりの黒猫。雄。長毛の雑種型。眼の色はルビーで肉球は黒。
一揆参戦初日、現在の森中にある家屋でマリファナを栽培していたら、身体に付着した匂いに釣られてかずっと離れずに寄り付いてきた。
その昔、煙草のように喫煙していたというマリファナを彼は好むらしい。
長く生きているであろう彼には愛らしい名前は浮かばない。故に渋く、煙管の意を持つラウと私は名づけた。


・？？？
夢。種別は妖夢。どこかの白髪お化けではない。いつの間にか付いてきていた。
憑りつかれて夢を喰われている…わけではないのだが、気に入られて共にいる。
少し前まで妖精だと思っていたがそういうわけではなかった。夢の中で、そう見せられただけだった。
ソレについての記述は後々語ることにする。


・Jack-o'-Lantern
ジャックランタン。ハロウィンの催しに出てくるかぼちゃお化けの名前。妖幻。
私の男性人格を顕現した姿。不思議にも『人格』にさえネクターでの契約は適応できるらしい。魔法生命、というよりは不可思議な生命体故にそれが可能なのかもしれない。
実際は私が変化する際のレパートリーが増えただけで然程深刻ではない。
男性の体に"みせる"ことができる。性格は彼と云う人格に準じるものの、大きな欠点も見当たらない人当たりは良い人なので問題提起することはない。
つい先日「あなたは悪魔風ではあるが私の影のようなものだから影になれば良いのでは」と呟いたら本当にそうなった。
メタ的にはデビルからシェイドへと今回で移行した。



◇エンブリオと話してみよう（独立する小噺）


・ラウの場合

『うなぅ……？』
「なォ……」
『にゃー、ふにゃ……にぅ』
「にゃぉー」
『ふ、きゅす…………うるる』
「うる……る、に、にッ、にぁ……」

　〜10分後〜

『ふに………』
「……な〜ぉ」

いつの間にか私はベッドに寝転んでラウを只管いじくりまわしていた。
抵抗の素振りを見せないのでこれで良いのだろう。やや疲弊したような眼をしていた気はしたが。

関係性：良好。



・？？？の場合

海の中、辺りを見渡せば木々が生えて、空を見上げれば流星群が空を覆いつくす。現実味離れた世界。
……ここは、現実ではない。夢の中。
海底の奥底で息をしながら、偽は夢の世界を見上げた。

「……どこにいるの？」
『…………」
「……ねぇ」
『…………』
「……エ」
『おしえてあげなーぁい』
「……教えてください」
『やーよ。だったらもう1度あそぼーよー』
「もう散々遊んだではないですか。躰が持たないです。だから夢から目を覚まさせてください」
『ウフフ、やだーぁ』
「……（意識が消える頃には現実で死んでないと良いな）」

関係性：良好？



・Jack-o'-Lanternの場合

『何をしているんだい？』
「服を作っています」

作業場を覗き込むランタンを持つ男。ハロウィンのような色合いの、紅葉色の髪と紅い眼のスカーレット。

『それは……燕尾服か』
「あなたが私と意識を換えるときに、不便かと」
『気を使ってくれなくても良いのに。幻術を使って、傍から見れば僕は本来の姿は見えないんだから』
「そういうわけではないですけど…気分的に嫌なんです」
『また実に抽象的だね』
「そういう気分なんです」

服を仕立て、やれやれと息をつく。今回作った特殊加工済の生地がどこまで耐えられるだろうか……。
できることなら荒事にこの服は持って行きたくないけれど、素材不足が深刻である。もう少し良い物を使って服を作りたい……そのために彼にも頑張って貰わねば。

関係：持ちつ持たれつ

偽の口から感想が漏れ出れば、その言葉を待ってたと言わんばかりの笑顔で

　人間の名は奇妙に長いものも多いが、これは良い。

　言葉にしつつ、故郷の日差しの強さを思い出す。
　芽吹いたばかりの葉すら即座に枯らす、容赦のない乾きの熱と光。王城近辺の安定した気候に馴れつつあるが、故郷は今も変わらぬ熱波にさらされているのだろう。

　偽の披露した手品に思わず身を乗り出してしまう。
　彼女の掌にある牡丹を凝視し、さらにその茎が衣服の隙間から覗いているところまで観察する。
　だがしかし、あまりに熱中しすぎたためか。当の彼女が後ろに下がっていたことに気付いたのは、少々時間が経った後だった。

　屈めていた身を起こし、トカゲもまた半歩後ろに下がる。

　しかもそれを自在に体外に発生させるという。
　なんとも面妖な能力。しかし同時。

　そう思うが、即座否定する。それはあくまでこちらの都合に過ぎない。
　そして説明を一区切りし、こちらの様子を窺う偽へと、言葉を紡いだ。

　彼女の言う、込み入った事情にも興味はあったが。
　込み入っているのならば、今は聞くまい。

噛まれた箇所を見る。しかし痛みを感じた仕草はなく、にこりと微笑んだ。
まるで『大丈夫心配ない』と言わんが如く。

話を聞きただただ世界の広さを実感するばかりだった。
そして自分の棲む場所にいたならば会えず聞けずのことなので少し子供のように楽しそうに話を聞いていた。
　

蔦の近くにふわりと『燃える氷』を寄せる。
その氷の周りはひんやりと、冷たさを周りに伝える。
そしてダメといった彼女の笑顔は見た目は暖かい。
だがどこか裏に一瞬で周りが凍りつくような重さがあった。
感覚的に『怒らせちゃダメ』というのがなんだか伝わるはず。
気をつけましょう。

作製を依頼したにも拘らず手数料を所持していない。
そんな大ポカをやらかした目の前の青年は、 両手を目の前で合わせ謝罪の意を示す。
だがそれも少し間。すぐ他に気になった事があるのか、話題を変え始める。

と、今度は“何か”と曖昧な問いを真顔で尋ねてくる。

恭しく劇団の挨拶よろしく深々と礼をした。