広大な自然要塞。その先には、巨大な城。
メルンテーゼでは、今日もここで戦いが起きている。
戦闘に次ぐ戦闘、この一揆と呼ばれる戦争は、いつまで続くのか…。

ここは、城内の一つ、地下牢である。
手のひらに乗れそうなほどの、ボサボサの緑髪をした小さな妖精が、ボソボソとそんなことを言っていた。

彼女の名はピアンタ・ナタンテ。城内で強制労働を強いられてる妖精である。
そして、そんなピアンタの呟きに、ブラウニーとシルキーは賛同している。
薄暗く、静けさが漂う地下牢だが、彼女達の会話で少しは明るい様子だった。
ちなみに、地下牢にいるからといって囚われてるわけではない、檻の隙間から普通に抜け出せる。

この二匹、どうみても回復や支援役なのにずいぶんとケンカっ早そうである。

ピアンタは、その考えによっぽどの自信があるのか、ニヤっと少し笑っている。
一体、どんな考えがあるというのだろうか。

（アカン）

ブラウニーとシルキーは、ピアンタの話を途中で半分聞いていない様子でわいわいがやがやしていた。
ピアンタはそれに気づいてない様子で夢中で話をしていた。
二匹は牢屋の簡易ベッドに飛び込んでいく。
……そして、その騒がしさ故に、不意の出来事に気づくことがなかったのである。


…ガタッ…

城内は薄暗い。その闇に紛れ込んでこんでいた。
黒い物体が簡易ベッドの下からでてきたかと思うと、一瞬にして二人の妖精を取り込んだ…。


・・・


・・・


・・・

ピアンタはそのベオちゃんMk-Ⅲと呼んでいる小さな花を掲げて熱く語っていたが
いつのまにか話を聞いてもらえていないことにようやく気がついた。
騒がしかった妖精二人が、目の前からいなくなっている、どうしたのだろうか…？

しょんぼりとした様子が目にわかるように、がっかりとしている。
どうやらあのブラウニーとシルキーは、初対面の相手だったらしい。
…この妖精は、初対面の相手にずいぶんと濃い話を投げかけていたようだ…。


ドサッ…

天井から、何かが落ちてくるような音が聞こえてくる。
ピアンタはその音にびっくりして振り向いた。

シルキーは、酷く衰弱しており…
助けを求めるようにピアンタに手を伸ばしたかと思うと、そのまま気絶して倒れてしまった…。

背後で起きた出来事とはいえ、シルキーは天井から落ちてきたことは先ほどの物音で推測が立つ。
ピアンタが、ゆっくりと上に顔をあげると……。

恐ろしい仮面を被った。真っ黒な身体をした人型が二つ…。
恐らく、人間ではない。なぜならその二匹は、液体のような身体を、人の姿に保っていることがわかるから…。
それがわかるように、べたりと天井に張り付いていた。

天井の黒い液体の中からブラウニーがでてきて、先ほどの、シルキーと同じように…
ブラウニーも、ドサッと音を立てて地面に落ちてきた…気を失っている…。

びくびくと怯えながらも、ピアンタは何か思い当たりがある様子で、黒い人型の物体を見つめる…。

襲われた二匹の妖精。そして、次の標的は恐らく自分自身であろう。
あからさまに、それがわかるように聞き取れないうめき声のようなのを発しながら、こちらへ飛びかかってきた。
この化け物が襲ってきた理由…そう、その理由は…。

※違います。


・・・

・・・

・・・

二人の妖精が地下牢へと侵入していた。どうやらエシャロットと行動しておらず、この二人だけらしい。

そう言いながら、シュタルはその辺に落ちていた煉瓦をひょいっと拾ってみせる。
この辺は比較的戦闘区域からはずれ、探索が可能なほどには安全になっている。
二人はなにかおもしろいもの…もとい、何か使えそうな材料、アイテムを探している様子であった。

シュタルは、コランに褒められた時だけは素直に喜んだりすることがある。
この二人はよく一緒に行動している。エシャロットが最初に出会った時から一緒にいた。
きっと、二人の間にしかない友情のような芽生えているのだろう。

…そうして、少しばかりの平和な探索をしていた時…突然『あいつら』はやってきた…。

緑髪の妖精が必死に羽根をぱたぱたさせながらも逃げている。

ローバル。
コランの口からそのような名前がでてきた。二人は、お面をかぶった黒い姿の正体を知っている。

ローバルの情報は、黒谷シュウスケ（ENo.178）と言う名の青年から聞いた話である。
話によると、ローバルは妖精や、一部のエンブリオから魔力を奪い、下手をすればそのまま命をも奪い、成長していく化け物だと…
シュウスケはその化け物を倒すために活動している正義の味方である。

・・・

あまり体力に自信がないのか、フラフラと高度が下がっていき、逃げる速さが下がっていく。
ピアンタは、そこからあっという間にローバルに追いつかれてしまった。

尋常ではない様子の化け物二匹に、ピアンタは恐怖を覚える。逃げる力は使った…。
そして、恐怖によって思うように身体が動かなくなり、完全に手詰まりという状態になった。
青い仮面をしたローバルの手が、ゆっくりと伸びていく…。

ボンッ！！

その瞬間、ローバルの伸ばした手に火球が飛んできて、爆発した。
ローバルが、火球が飛んできた方向を見ると、二人の妖精が戦闘態勢を構えている。

シュタルも、覚悟を決めた様子で、背中についている大きな手裏剣を、手にとった。

雄叫びのようなものを上げて、こちらに向かってくる。
不用意に近づいたり、近づかれたりすれば魔力を奪われてしまう…。
細心の注意を払って戦わなければいけない…。

シュタルは小さく頷き、コランを守るように前にでる。
今、妖精とローバルの小さな戦いが、始まろうとしているのであった。

つづく。

後光がぱぁぁぁぁって差すぐらいに輝いて見えます。
うっかりこんな大人になりたいとか思ってしまいそうなほどに。

それはそれとして、驚きの一言が。

これまでの恋の判定基準を覆す、衝撃の一言です。
そう、これまで恋について相談した人の、実に８割が電流説を口にしていたのです。

急にそんなことを言われたら、誰に恋すればいいのか分からなくなってしまいます。
自分が今まで普通に話していた相手まで、もしかしたら……　

深呼吸を一つして、暴走しそうになってた頭の中を冷やします。
話の続き、今のエシャロットさんの話を聞いて。

恋が終わってしまったら、どうなってしまうのか。
アムルの好きな恋愛物語には、そんなことは書いていなかったから、不安だったのです。

少しいい加減に見える。
でも、曇りのない笑顔を見せてもらって、アムルは安心しました。


◆

美味しそうにトゥルトゥット・カーポスタを頬張る二人を見て、嬉しそうに表情を緩めています。
いつもは真剣な表情に隠している子供っぽさが、無防備に覗いています。

ほふー、と安堵の溜息をついたところで……　

いつの間にかエシャロットさんの傍らにいた天使さまを目にして、首を傾げます。
前にいた世界では天使はそこら中にいたので、存在自体には驚いてはいないようです。

ぺこりん、と頭を下げます。

ちょっと照れているのは、エシャロットさんとの関係を説明するのに、
どんな言葉が適切かを考えるうちに、口にしたものよりもう少し親しい関係を思い浮かべてしまったからです。

　　たまコはエシャロットさんの本質を詳しく知らないので
　　その発言を女同士だからと冗談のように受け取っているようだ

　　*　何の確証もない励ましにもならない励ましを繰り出した　*

　　スーさんの話を聞き、なるほど、と小さく頷く

自分の顔をぺたぺたと触る。

コップを受け取りつつ注がれた酒をジーっと眺め

コップを傾けグイッと一気に飲みほします。