《十一通目の手紙》


さいきん、戦い方というものを、考えるようになりました。

一揆で行っている攻城戦が激しくなり、より入り組んだ地形の調査が必要になってきたこと。
それに伴い、別行動をとる機会も多くなったため、今までのように仲間の人たちに頼る戦い方ではダメだと考えたからです。

わたしの戦い方で、もっとも変えるべきものは、攻撃。

今までは、ほかの人に任せて、自分は治療などのサポートに回っていましたが、いつまでもそれは通じません。
確実に敵に打撃を与える手段が必要だと、わたしは考えました。


それには、自分自身の力ではない、蜘蛛のエンブリオを利用してえた力である、蜘蛛の呪い。

今まではあまり有効に使っていなかったそれを、自分の手足のように、自在に使いこなす必要を感じたのです。












蜘蛛の呪い、と、わたしが呼んでいる、その力の正体は、蜘蛛の怨念が凝り固まった思念の刃のようなものだ。

小さな蜘蛛が、小さな牙で噛み付く、それを何千、何万も束ねて編んだもの。

蜘蛛のエンブリオを、わたし自身が直接に操ることはできない。

実体すら見せずに、一方的にわたしに力を貸している存在であるそれは、わたしにとっては厄介な力だった。

だけど、蜘蛛のエンブリオは、この世界に生きている、全ての蜘蛛の名を持つものに通じている。
たとえば、わたしの部屋に迷い込んだ、一匹の小さな蜘蛛にまでも。


わたしは、彼らの手を借りて、呪いを制御する方法を考え付いた。

そっと髪の毛の中に、連れてきた小さな蜘蛛を載せる。
蜘蛛の脚がしっかりとわたしの髪の毛にしがみつくのを待ってから、わたしは訓練をはじめた。


最初にやるのは、自分と、自分の髪の中にいる蜘蛛の感覚を近づけること。

蜘蛛の感覚を共振させるように、そっと馴染ませていく。
人間には、この感覚は絶対に理解できないだろう。

一番近い感覚は、たぶん、手の平を触れ合わせて、動悸の音を合わせるような────・・・

つながった、と感じる。

わたしはまず指先に意識を集中させた。


爪で引っかくイメージを浮かべると、それに重なるように、無数の残像が指先に集まってくる。
それは痛みのような、痒みのような、独特の感覚としてわたしの爪の内側を撫でる。

これが蜘蛛の呪いだ。

蜘蛛のエンブリオが、わたしを保護するために生み出した呪いを、蜘蛛を通じて、わたし自身の中に取り込んでいる。

もちろん、蜘蛛の呪いがわたしを蝕むことはない。

わたしはゆっくりと、指先から染み出す黒い液体をイメージしながら指先を振った。





指先から染み出したそれは、まるで蜘蛛の糸のような柔らかさで、風にたなびくように宙に広がっていく。

わたしは、自身で糸を出すことはできないけれど、糸の編み方は、うっすらと理解できる。


片手に剣を構えたままで、剣の動きに合わせるようにして、蜘蛛の呪いを手繰って廻す。

わたしには、糸を自由に作り出す力はないからだろう、こうやって糸を繰る真似事をするのは楽しく感じる。

この糸が、触れたものを害する、蜘蛛の呪いで編んだ糸だとしても。











まだまだ、わたしの力は未熟だから、うまく蜘蛛の呪いを操れないでいます。

ですが、何十、何百、何千と、この呪いの糸を束ねていけば、どんな強い敵でも、いずれは相手どれるようになるでしょう。

だって、蜘蛛たちは、ずっとそうやって、獲物を狩ってきたのですから。

聞きなれない言葉に少し反応する。

虎耳に刺さる視線には、さらに耳をぴこぴこと動かし

すい、としゃがみ、頭の高さををアムルの届く位置まで下げた。

続く、戦争の話に関しては、

また、殺伐とした雰囲気──という言葉には、うーん、と少し唸りを返す。

優秀と言われてちょっと嬉しそうだ。

◆別の時間◆別の場所◆別のシーン◆

パジャマの裾をはためかせると、手品のように服の下から漆黒の少年が現れる。

(「お土産たくさん用意しなきゃだね！」などと言いつつ—)

(ピコピコ動く触角のビートが少し早くなった—)

(触角の動きは鈍くなり—　何ていうか、もじもじとしている…)

少しだけ悲しそうに笑います。

　　無知の無垢に因る恐怖の宣告が響き渡る！（ぇ

　　すぅっと呼吸を整えた後にそう言葉を吐いた

　　…と、そんなとんでもない事を言い放つ

　　…と、さらにとんでもない事を言い放つ

営業口調で淡々と喋る。
そんなこんな商品についてしゃべっているとライアーの後ろにフッと何かが現れた。

現れたそれは悪態をつきいつの間にかライアーの手元に小さな木箱を渡していた。
半透明のその女性のような姿のものが霊のような存在であることは初見でも見当がつく。

木箱の大きさは少し太めの文庫本サイズと言ったところだった。

そう言うとアムルに裁縫セットを手渡す。

　　思うところがあるのか、貴女の方を見てはいるものの
　　意識が少し別のところに向いているようだ
　　少し間をおいて、口を開く

少し離れた所で謎生物達が何やら話をしながら現れた。

謎生物達の間で何かが決まったのか、今度はあなたに近づき、そして話しかけてきた。

どうやら謎生物達はこの辺りで誰かと待ち合わせをしていたらしい。

　
　　　　　 ちゃっかりオーダーまでしつつ、暫しつついたりして遊んでから漸く開放した。
　　　　　　 意外と、小さいもの好きの様でもある。

　
　　　　　 少し申し訳なさそうに、くすりと微笑んだ。
　

　
　　　　　 にこにこと笑みを浮かべながら、おどけるように
　　　　　　 顔の横で両手の掌を広げて見せた。

鞄から櫛を取り出して、髪や耳をくしくしと整え。

ちら、とクマのぬいぐるみに視線を落とし。

アムルは、セツナの口の端が酷く歪んでいるのが見えた……かもしれない。

と、そこまで真面目な面持ちで話していたが、照れるアムルの発言を聞くとにっこりと目を細めた

どうかな？といったカンジで首をかしげつつ

少し意地の悪そうな笑顔でにや、とわらいつつ。