戦いを終えた彼女は、それはもう見るも無残な姿をしていました。
片腕はもげて、身体のあちこちが欠けて、服もそのほとんどが溶け落ち、まるで機能を果たしていません。
別に、先の戦闘で倒されたわけでも、特に深刻なダメージを受けたわけでもありません。
ただ、魔法…特に、相手を倒してしまえる程の魔力を使おうとすると、身体がぼろぼろと崩れてしまうのです。
しかし、服も身体も、不思議と翌朝には元通りに治っています。

一晩眠れば、傷が治る体質なのでしょうか。
食事をすれば、服が自然と繕われる体質なのでしょうか。
とにかく、どんなに傷付いても次の日には元に戻っている彼女のことを、あまり心配する必要はないのかもしれません。
彼女は日が暮れると、闇に溶けるように仲間の前から姿を消してしまいます。
夜の彼女の姿は、誰も見たことがないのです。


　+ + +


暗い暗い夜の道を、一人の男が速足で歩いていました。
カシャカシャと鎧の擦れる音からして、兵士か何かなのでしょう。
しかし、街燈もないこの暗がりでは、彼がどちらの陣営に属しているのかまではわかりません。

彼の歩く先に、小さな水溜りがあります。
それは、あまり深くはなさそうなものでしたが、雨が降ったわけでもないのに、そこにぽつりとありました。
夜空の色を映した水は、闇の中でも黒々としており、不思議なことに星明りなどは一切映っていません。
兵士は、小さな水溜りなど意にも介さず、そのまま通り抜けようとします。
そして、水溜りに足をついた瞬間。
それはまるで深い穴に水を張ってあったかのように、ドボンと音を立てて、兵士の身体が一瞬で水溜りに沈み込みます。
水は澄んでいるように見えますが、沈んだ身体は闇に溶けるように、中の様子はまるで見えません。
あまりに突然の出来事に、彼は少しだけもがいてみせますが、その甲斐なく沈んでいくのでした。

しばらくして、水溜りから這い出すように、一人の人影が現れます。
先程の兵士でしょうか？

それは、白い肌に白い髪の少女でした。
彼女は、どこにも綻びのない黒い服を着ていました。



※プロフィールが少し更新されました。
今までに明らかになった彼女の種族の特性が一部載せてあったりします。

熱せられた鉄板に落ちた水滴のように転がる黒いのを服をめくり上げてとどめようとしてみる

先っぽをつついてみたり、リンゴを切ってみたり・・・

しょりしょりくりくり
半分に割ったリンゴを自前のナイフで切り分け

自分も一切れ口に咥えながら

くるっと尻尾が動いて手をくるむ

そこまで言って、急に背後に現れた謎の魔物に気づきます。

まいかは戦闘経験も何も浅いので、それがただの敵であるとしか認識できません。

モップを構えると、戦闘態勢を取ろうとします。

なんとも厚かましい存在であった。

流石に驚いたのかびっくりしているようだ

そう言うと、背中の白い大きな羽をぱたぱたさせ、一応飛ぶふりをしてみせる。