ENo.40 西圓寺真衣

第十二話　武装

真衣のメンテも兼ねて、一行はスティルフの街の方に歩みだす。
そろそろ稼働して三カ月が経つ。
彼女自身の稼働は偶然によるもの何時不具合が起きて動きが止まるか分からない代物であった。
先日のカメーリエライブの際に自分の身に不審な動悸を及ぼしたと言う事もあり
オルゼを旅立つのであれば、スティルフの方へ行ってみたいと進言した為でもあった。

「うぅ〜んっ　やっぱり、街の外に出ると新鮮な料理が取れないですぅ」
口を尖がらせながら、頭の後ろに両手を合わせつつ話す

「すまない。　お嬢　流石に、新鮮な材料があってこそ、新鮮な料理が出来るんだ」
一般の人には分からないようが、うなだれた用に答えるヴァル

「そこら辺が夢の料理と違うのですね。　夢だったら何時でも取り立てで新鮮なんですよ。」
　そういえば、ヴァルさんに夢の欠片で作った料理を作って貰えたら味気ない夢の食事も
　美味しく食べれるのかも？　ヴァル達も夢の世界に一緒に来ませんか？」
満面な笑みを浮かべつつ竜人の彼に答える。

「お嬢よ？　夢の世界というのはどう行くの。私にも行けるようなものなのか？」
眉を顰めながら、竜人は答えたが、一見様には、怒っているようにも見える雰囲気であった。

「……（夢の料理……　夢の世界の素材は味気ないと言っていた記憶があります。）
　……（調理次第で変わるようなものなのでしょうか？）
　……（また、夢の世界というのは、私のような夢を見る機構のない機械人形ですら）
　……（行けるような処なのでしょうか）」
前に歩く二人を何時もの如く観察する立ち位置でじっと見つめる彼女
彼女にとっては、エレンやヴァルの雑談と呼ばれる会話に参加する事は殆どなく
二人の会話にセンサーを傾ける。
とは言え、話しかけられたらそのやりとりは行うのだが、相手が何を会話として欲しているのか
また、どういう会話をすればいいのかという会話のバリエーションがない為、すぐに会話は途切れる
のが彼女の常であった。

そんな折、彼女はとある物質を感知する。
彼女のいた世界では絶対にあり得ない生命体である。
肉汁が滴り落ちる肉片が牧草を食べている光景を察知した。

「……（草食なのですね。牛や羊と同じような生命体なのでしょうか？
　……（この地でも謎の残る生命体の一つですね。　このままでは遭遇します。
　……（センサーに反応出来たのですから、二人にも警告をするべきですね。
　……ヴァルさん……エレンさん　前方１キロほど先の橋に、以前遭遇した逃げる肉片の集団がいると思われます。
　……迂回しますか？」

「えっ！？　あのにげるお肉ですかっ」
　真衣の話を聞き、虚空を見つめる。
話が分かってくると、満面の笑みを浮かべ、手を叩く
「（ぽんっ）　あれって新鮮ですよね！？　ヴァルさん
　アレを捕まえて今日のご飯にしちゃいましょうよ」
　以前、戦った際に美味しかった料理を思い出して、少しのよだれが見える彼女だった
　
「……お嬢っ」
　苦労性のヴァルはそれを見て、エレンの口元をぬぐう。
　
「もがっ、　何をするんですかヴァルさん」
　よだれを垂らしていた事に気が付いていなかったエレンは非難の声をあげ
両手でアピールをするが、ヴァルの手は止まる事はなかった

「……それでは、そのまま戦うと言う方向で良いでしょうか？」
　淡々と真衣は二人に報告した。
　
「あぁ、マイ　後で料理するから、しっかり叩いてくれるとありがたい。
　あいつらの肉は思った以上に固いから、しっかり叩いてほぐしておいた方が後の調理は楽になる。
　あと、お嬢も、斬る際に細切れになるほど斬っては、調理しにくいから、ある程度のブロックを残しておいて
　くれるとありがたい。」

「……(コクリと頷く」
「ラジャー！！」

調理すると言う前提で話が進む。
料理となれば、３人の中では意外と言えば意外、当然と言えば当然の事だが、
ヴァルが主導権を握る。

真衣は、調理などと言うモノをしないし、アル意味食べる必要もない少女
エレンは、この世界とは隔絶された世界から来た少女で、食糧と言うモノもこの地に来て初めて
知った少女

当然と言えば当然の内容だった。

その夜　香ばしい肉が焼ける匂いと共に談笑しながらの夕食が行われたと言う。

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「……（そろそろ、武具を整えなければならない頃です。）
　……（私の武装そのモノの威力は祖父が作ってくれるので問題はないのですが、）
　……（各武装にオプションパーツをつける必要が出てきました。）
　……（エレンさんもヴァルさんもそのオプションパーツをつけると言う機能は会得していない。）
　……（探す必要があります。）
　彼女が今いる地点自身はこの地に居る探索者と呼ばれる。モノ達のメインルートとは異なる地点に居る。
中々、力のあるオプションパーツをつけるモノと出会う事は限りなく少ない。
また、今回彼女がつけてほしいと思うオプションパーツをつけれるような力を持つモノは尚更であった。

「……（該当の力を身につけたモノを発見」
彼女のサーチ技能は、近隣のモノ達を全て把握できるのだが、そこからの交渉が彼女には不得手な
部分であった。
他人との交渉術と言うモノが全く理解できていない為だった。
該当する人を発見するが、見るだけで終わる事も多々ありえることだった。
今回は、最初に見つけた純白の羽をもつ青年に、話しかけてみる事に

「……すみませんが、貴方の力を貸してもらえないでしょうか？
　……対価となるようなモノは私は持ち得ておりませんので、
　博士の作る武器を対価としたいのですが」
　博士には事前に報告はしていなかったのだが、博士の場合は、事後連絡でも間に合う為、交渉の材料として使う
とはいえこういう交渉事で、最初から自分の手の内を曝け出すと言うのは下の下の策ではあるのは言うまでもない。

「これはイイ処での話だね。　私自身もそろそろ剣を作ろうと思っていた処だよ。
　美しい人。私でよければ、君の武具に力を吹きこんあげるよ。　その力を込めてほしいと言う武具はどれだい。」
　真衣の持っている武具を一瞥しつつ彼はそう答えた

「……（交渉は成立と言う事でしょうか？
　……（後で博士にも連絡する事にします。
　……私の付加をしてほしいと思っているのはこれです。」
　首元に淡く輝く青いクリスタルを指さす。

「……出来ますか？」

「やっぱりそれだったかい。　私の力を使ってほしそうな顔をしていたのはその宝石だったから
　目算は立てていたけれども、。今のままの私では難しいが、少し鍛錬をした後ならば出来るかな
　ちょっとそれを貸して貰えないかい？」

自らの力を制御する一つとなるクリスタルを一時的とは言え手放すのは彼女にとっては負担になるのだが
クリスタルに力を込めてほしいと思っている少女はその言葉を信じクリスタルを鳥人に手渡す。

「では、代わりに私の武器もお願いするよ。」
そして彼から伺った仕様を博士に連絡する。
彼女自身は武具の作成と言う点では手伝えない為、鳥人の動きをじっと見ている。
視線が絡みついているからか、少し動きにくそうに鳥人の方は動いているようだった。

暫くすると、彼女と同行しているエレン、そしてヴァルも同じように彼にオプションパーツを頼みに来ているようだった。
「……（私の同行者全員が頼みに来たのですか）
　……（こういう偶然というものあるのでしょうか　確立としては低確率だとは思います。）
　……（確かにこの地方で彼らも欲していた力を持ち得ているのはごく限られているのであり得る事です。」
　思考交じりに、じぃっと、鳥人を見ているが、
　彼女のブルークリスタルの周りに花びら舞い、徐々に集約して言っているようだった。
　季節としては冬に近いこの時期に春、夏、秋、そして冬の花四季折々の花びらが舞い下りていた。
　
「綺麗な人できたよ。」
　と言って彼女の首元にそっとつける
「ありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げる。

そしてそのタイミングで狙ったかのように、
博士からの武器の転送が行われ
地面に大きな穴が作られる

「これでどうじゃろうか？」

と空気を読まない博士の武器転送であった。

今回は卯の花腐し(2988)　様をお借りいたしました。