【この話は前回の樹里さん(14)からリオンへのメッセージへの続きとなります】
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「樹里っ…！僕と一緒にがんばるって言ってたじゃないか！！
どうしてこうなったのかの原因見つけようって…っ！」


記憶も感情もなく、戦闘で肉体に受ける痛みさえ感じていないかのような少女に、声の限りに叫び続ける。


「どうして答えてくれないの？！
お願いだよ、樹里！こっちを見てっ……」


どのくらい繰り返し訴えただろう。
しかし少女の瞳は何も映そうとはせず。
やがてその場での戦闘を終えると何事もなかったかのように仲間と合流し、何処かへと去っていく。
夕焼けに照らされたその黄金色の姿はまるで僕が知っている樹里とは別人のようで。
追いかけることさえできずに、ただその後姿が遠くなっていくのを呆然と見送ることしかできなかった。


「…………」


「…………」


「…………樹里」


「…………もう樹里の記憶の中に僕はいないの？
なにもかも全部全部なかったことになってしまったの……？」



仔狼姿の自分を抱き上げて無邪気にはしゃいでた樹里。
ご主人様になってくれる？という僕の問いに何度も笑顔で頷いてくれた樹里。
そして差し出した首輪をその華奢な細い指で僕の首に嵌めてくれた樹里。



どうすれば取り戻せる？
樹里の国の言葉を理解した時のように、
成長を早めた時のように、
自分の中のこの精霊の力を使えばまた元の樹里に戻ってくれる……？



マリアに教わったように胸の前で震える手を組み。
ぐちゃぐちゃに混乱した頭でそう願いかけた、まさにその時。





『樹里に会いたいですか？』





どこからかそう問いかける声が聞こえてきたのに辺りを見回すと、いつの間にか今までいた森の中とは違う何処か別の場所にいることに気付かされる。
そこは上も下も右も左もなく、時間すら流れていないようなこの世のどこでもあり同時にどこでもないような空間で。
認識した途端ぐらりと足元がふらついたのに、ついに自分はおかしくなってしまったのかと思わず薄い笑みを浮べてしまう。


————これはきっと幻聴だよね。
でもなんで今更そんなことを聞くんだろう？
会いたいに決まってるじゃないか。でももう今の樹里は……
そう思いながらぼんやりとその謎の声に耳を傾け。


【樹里という概念は役目を終えた】とか【身体と記憶は別々の場所に残した】とか一体何のことを言ってるんだろう。

【人格は役に立たない】？【僕の邪魔になる】？
そんなこと思うわけないじゃないか。
樹里が樹里としてこの世界に存在してくれるなら、それだけでもう僕は。


「……会いたい
会いたいよ、樹里にもう一度」


淡い微笑を浮かべると、姿の見えない声の主にはっきりとそう答え、声の導くままに紅い花を空高く掲げる。


「僕を覚えてなくてもいい。
もう一度最初からやり直してもいい。
その為に必要ならネクターでも命でもなんでも捧げるから、どうか———！！」


一心不乱に願いながらそう叫ぶと、突如空間を裂くようにして掲げたネクターが奪い取られ。
数秒経過後、ネクターの花から伸びた蔓に包まれるようにして、何か丸いものが再び裂けた空間から零れ落ちる。


「……これは……珠？」


現れたのは不思議な色に輝くひとつの珠。
恐る恐る中を覗いてみると、小さな少女が入っているのがわかる。
眠っているのか目は閉じたまま身体を丸くしたその姿は、大分幼くはなっているけれども紛れもなく慕い求めた樹里その人だった。




「樹里……っ！」




『ネクターを、たくさん食べさせてあげて』




両手でそっとその珠を包み込むように受け取ると、空間の裂け目は現れた時と同じように忽然と閉じ。
それきり謎の声も聞こえなくなってしまう。

そしてふと気付くともう陽が落ちすっかり暗くなった元の深い森の中に、僕はただひとりぽつんと残されていた。



「夢……じゃないよね？」


ひとりぶんぶんと何度も頭を振ってから、もう一度手の中の珠を見つめる。


「樹里……眠ってるの？」


その中に最初見たときと同じように安らかに眠る樹里の姿を確認すると、安堵の溜息をつき。
なんともいえない幸福感に包まながら、珠の中の少女に微笑みかける。



「……今度はちゃんと守ってあげるから。
もう絶対に離さないからね、樹里—————」



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【今回の日記では樹里(ENO.14)さんをお借りしました！いつも有難うございます】

だから、たいしたことはないですよ、と説明しました。

あらわれた植物の蔓を、鋭く睨みます。
それを通して仇敵を見たように。

じっと見て、生理機能には、それほどちがいが見つからないです、と言って。

受け入れられるかどうか、という質問の答えに、そう返しました。

ちょっとだけ、と、フードをごそごそ脱ぐと、その下には頂いた髪留めをつけています。

恥ずかしそうに、髪留めがよく見えるようにと、少し顔を斜めにして見せます。
しばらく見せてから、恥ずかしそうにフードをかぶり直して。

まだ寒いし、視線もちょっと怖いから、もう少しフードはかぶったままですけど、と。
照れくさそうに顔を伏せて、ぺこりと頭を下げるのでした。

>クリスマスプレゼント

どうも、すぐには名案が思い付きそうにないようだ。

どうやら、リオンが表情を曇らせたのをそういう理由だと勘違いしたらしい。
そして異能者のことを問われれば、暫し悩む様子を見せ。

困惑の表情を浮かべると同時に、シオンは話を一旦区切る。

浮いている球体に指を差し入れる。
ゴムボールのように弾くのではなく、まるで水面に突っ込んだかのようにシオンの指は球体の中へと進入していった。

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