色々な会話をした後、兄さんとの会話を打ち切る。
すると、さっきから輝いていた球体の1つがそっと消灯した。
どうして今まで気付かなかったんだろう。こんなに近くに、兄さんに近しい存在があったというのに…。
そういう面でも、彼女には感謝しないといけないね。

実は、僕達以外にこの地メルンテーゼに来る予定があった人が1人いる。
でも彼女はどうしても別行動を取りたがったため、僕達とはここに来る前に別れてしまったのだ。
『魂の契約』の件もあるから、早いところ彼女と出会っておきたいんだけど…一向に消息すら掴めないでいる。
…本当にこの地にいるのかも、ちょっとだけ疑問なのは秘密。
何にせよ…トガノさんが戻ってきたら、また探してもらうつもりだ。

球体の1つに向かって指を突き出す。
球体はあっさりと僕の指を受け入れてくれる。
つぷ、という感触と共に、僕の脳内に様々な情報が流れ込んでくる…。
ゆっくりと目を閉じ、それらを受け入れていく。

———武器を取り、敵軍に向けて前進せよ！

———我等が帝国に敵はない。者共、私に続け！！

———何ということはない。ただ日頃の鍛錬の成果を見せてやるだけだ

———やれるだけのことはやってやるさ。だが…その先は知らんぞ

———これは、貴様等の望んだことだ。そのツケは己が身で払え

———その命、確かに承った。できる限りの支援を約束しよう

これはその球体…いや、その魂の持ち主の『当時の記憶』。
彼女は、僕達が所属する帝国の第3将軍だった。
といっても、当時の帝国は決して一枚岩ではなく———。

急に背後から話し掛けないでほしいなぁ…ビックリするよ。
でも、戻ってきてくれてよかった。

その姿を見て凍り付いた。
トガノさんの左腕は吹き飛んで原形がなく、全身も切り傷擦り傷でボロボロ。
何かしらひと悶着を起こしたのは容易に想像できたけど、それを聞いているどころじゃない。

トガノさんが懐から何かを取り出そうとした…けど、その前に行動に移すことにした。
僕はトガノさんの身体を包むように球体達を配置し……。

魂生成化の手法。つまり、球体契約の儀式を行おうとした。
だけど……。

★執事の手記★
使えるもんは利用し、そうでねーもんは葬るだけだ。
実にいつも通り。全てはそれ1つで判断できる。
分かりやすくて、いい。