○月　○×日　晴れ

　……はい、今日もアップルさんでした。

　えっと、久しぶりに、イオちゃんとアンジェさん、レンドランさんと一緒に行動できました！
　やっぱり何だかんだでこのメンバーが一番落ち着く気がするよね。

　レンドランさんがまたダブルハリケーンドラゴンさんを呼んでて、インパクトすごかったなぁ。
　なんだか皆すっごく強くなってて、驚いちゃったよ。

　それと、アップルさん達を倒した後に、この前平原に連れて行ってもらった人たちに会ったよ！
　練習試合することになったんだけど、思ったよりもちゃんと戦えてよかったー。
　私たちも、しっかり強くなれてるのかな……？

　そうそう、なんだか最近ハニワさんの様子がおかしいんだ。
　なんていうか、落ち着きがないよね。

　うん、落ち着きないね。
　今もテントの中をうろうろしてるし。

　天使さんに心配されても、なんだか上の空です。
　いつもだったら表情は変わらないまま飛び跳ねたりするのに。

　そういえば、魔力も随分と強くなってるような気がする。
　もしかして、最近皆してポ○モンしてるし、進化でもするのかなぁー。

　まぁ、もしも変なことになりそうだったら、ちゃんとBボタン押さないとね……。



【メモ５．得たものと失ったもの】

　『彼女』と混ざり合う事で精霊の魔力を手に入れた私ですが、その魔力は私には膨大すぎました。
　『彼女』を受け入れるには、私の器は小さすぎたのです。

　例えるなら、小さなコップに、バケツの水をそそぎ込むようなものでした。
　有り余る魔力は当然溢れだし、周囲の時間を歪めて被害を出し続けたそうです。

　無尽蔵に溢れ続ける魔力をどうにかする為に、お兄ちゃんと叔母さんによって、二つの方法が提示されました。

　一つは、私と『彼女』を切り離す方法。
　これがもっとも周囲のリスクが少なく、確実といえる方法でした。
　ただ、すでに一個の存在ではなくなってしまった『彼女』は、私と切り離されると消えてしまうこと。
　それと、私と深く混ざり合った『彼女』だけを切り離すのは不可能で、私の大部分……記憶や人格を初めとした、魔力と密接に繋がる魂と呼ばれる物を欠損してしまうだろうという問題がありました。

　そしてもう一つは、溢れる魔力を消費し続けるという方法。
　溢れだしてしまう魔力を、それ以上に消費する事で被害を減らそうと言う方法です。
　ただ、これは根本解決にはならない対症療法的な方法でした。
　悩んだ結果、私はこの方法を選びました。

　まず私の体に、ある魔法的な仕組みを組み込む事になりました。
　溢れだした魔力を消費して、ある魔法を構築する仕組みです。
　時間移動ではなく、時間操作。
　私の時間だけを過去へと巻き戻す、世界の理に背いた大魔法です。

　元は『彼女』が所持していた時間操作魔法だったのですが、時間の巻き戻しは、加速や停止に比べても魔力の消耗が大きく、『彼女』にも自由に扱えない物でした。
　その魔法を、魔力の不足した発動待機状態で私に組み込み、溢れた魔力の蓄積先にしたのです。
　同時に、万が一にも魔力が漏れでないよう外から何重にも封印を施しました。
　イメージとしては、川の流れを変え、その先にダムを設けるような物だと思います。

　そして、魔法が発動可能になるまで魔力が蓄積されると、即座に時間操作が発動し、蓄積された魔力をすべて消費するようになっているのです。
　それによって魔力を外へ漏らすこともなく、『彼女』を失うこともなく、私はそれまでと同じように暮らす事が出来るようになりました。

　本来あるべき、未来と引き替えにして——

　　　＊　＊　＊

「……よくまぁ、そんな辛気くさく書けるものね」

　『私』がまるで他人事のように、私の手元をのぞき込んで言いました。
　まぁ、彼女にとってはまさしく他人事なのですが。

「仕方ないじゃないですか。全部本当にあった事なんですから」

　私は事実を書いているだけだ。

「そーいうんじゃないのよ。書き方が悪いって言ってんの」

　言いながら、『私』がメモを取り上げました。

「返してください。まだ書き終わってないんです」

「……ほんと、つくづく後ろ向きね。未来がなくなるとこんなにくだらなくなっちゃうのかしら」

　呆れたように言う『私』は、どこか不快そうにも見えました。

「こんな事をわざわざ書き残すなんて、悲劇のヒロインのつもり？　今時流行らないわよ、そういうの」

「——っ、そんなつもりじゃ」

「だったらなんなの？
　記憶を失って目覚めた自分にこんな物みせてどうすんのよ。
　寝起きに鬱々しい書き物見せられて嬉しいわけ？　なんなの？　貴女マゾなの？」

「放っておいてください！　貴女には関係ないじゃないですか！」

　メモを奪い返して、また机に向かいます。
　そんな私に、彼女は冷ややかな視線を向けました。

「それもそうね、たしかに関係ないわ。
　けど、いい加減、そうやって可哀想な自分に酔って自己満足に浸ってる場合じゃないと思うんだけど。
　貴女だってわかってるでしょ？」

「……あと一年」

「一年持てばいい方ね。まぁそれよりも先に、アイツに食われるだろうけど」

　だからその前に、と彼女は続けた。

「私に譲りなさい。その魔力も、魂も、存在も全部ね」

　——どうせ、死ぬのだから。

　

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　クロエはティアの「──ひにゃぁっ！？」という悲鳴を聞いて、驚いたように耳から顔を離した。

　普通の人でもそうなるような気もするが、クロエにはわからないようだ。

しばらく自分自身の知識だけで考えてる様子