どうにもステフの様子がおかしい、と気づいたのは昨日の事だった。



　あの練習試合（思い出すのも複雑なあの珍妙な一騒動だ。一体なんだってあんな事になったんだろうな、本当……）の後、「山岳の方で有用なエンブリオが手に入るらしい」という情報を得て再び星屑の小川から星屑の山やってきた俺達は、そこで一旦休憩を取るべく昼食の準備を始めた訳だが。

　休憩の準備をしている時もオカシイなとは思っていたが、ミクネが用意したサンドイッチを受け取る時もこんな感じで燃え尽きていた。正に真っ白って感じだ。炭を通り越して灰になっている勢いだ。気を付けないとこのままコカトリス人生（？）を終えてしまいそうな気配に、流石に俺たちはビビった。これはちょっと普通じゃない。何より、ステフがこんな調子だとこっちの調子が狂っちまうっていうか何ていうかな……。

　もっとも、一晩寝れば治るだろう……と心配気なミクネとは対照的に俺はちょっと気楽に考えていた。だから、とりあえず様子を見ていてやろうぜ、なんてアイツを説得してこうやって山登りを始めたわけなんだがな。

　予想に反して、夜が過ぎ朝になってもステフの様子は変わっていなかった。
　それどころか、昨日よりさらに萎れている気がする。特に、頭のとさかはまだ昨日の時点ではもうちょっと元気よくたっていた気はしたが、今朝見たらまるで水をやり忘れて干からびた鉢植えの花みたいになっちまっていた。



　これはマズい。
　尋常では無いぐらいの落ち込みっぷりだ。



　そんな状態を何とかしようと思ったのか、ミクネが鍋を用意してくれと言って来た。曰く「ステフに旨いものを食わせて元気を出してもらおう！」……という趣旨であるらしい。
　なるほどな。確かに飯が美味いか美味くないかというそれだけでも、士気に関わってくるってもんだ。どういう理由で元気が無いのか知らないが、やけ食いしたら不調も吹っ飛ぶかもだしな。それに別に鍋の準備なんてその程度は朝飯前だ。得意の物品創成で土鍋を用意してやった上に、適当なサイズの石を積み上げて簡単な竈も作ってやる。

　そうすればアイツはどこから持ち出してきたのか、沢山のキノコをどっさりと用意してきやがった。
　はー……元々山暮らしの狩人だったというが、それにしたって見事なサバイバル技術だよな。アイツなら大自然の中でも平気で生きていけるってものだぜ。我がPTでも随一の料理の腕前もまた、その役に十二分に立っていることは言うまでもない。




　……というのが、今から数十分ほど前の事になる。

　ステフは相変わらず元気が無い。
　今も適当な場所に腰掛けて、深い溜息を履いている様子だった。

　こんなに元気のないステフってのもレアだな本当……。
　マジマジと俺はその光景を眺める。元気だけが取り柄、とまでは言わないがそれにしたって落ち込んだりとかする様な性格には見えなかったんだが。そんなもの笑い飛ばして蹴り飛ばし、我が道を行く……的な？　ゴーイング・マイ・ウェイ？　そんな奴に見えてたんだがな……誰しも意外な一面はあるという事なのかもしれない。


　そんな事を思っていた矢先だ。

　遠くからミクネの呼ぶ声がする。
　視線を向ければ、お玉を片手にピョンピョンと飛び跳ねていた。

　一体何のようなんだろうな？
　……まあいいや、ちょっと言ってみるとするかね。




【 練習試合に続く 】

※今回のネタや台本（命名とか含め）はEN0.668 イコン様に色々お世話になりました。
　この場を借りて御礼申し上げます。

頭を撫でてもらって嬉しそうだ。

とても楽しそうだ。　
小動物だが、喜怒哀楽は予想外にはっきりしている。

このすずめは空が好きなようだ。

腹着地・・・・

“あっち”の方角にあるのは草むらだけだ。

頭を軽く掻いていたかと思うと、男が突然狼に姿を変える。

そう言うとまた人間の姿に戻った。

と言いつつ尻尾を眺めている。

青年が身をかき抱いたり頬を染めたりするのを見て何とも言えない表情を浮かべている。

嘆いている青年を見ながら軽く笑っている。

はじめてみる"竜"に、人型になったあとの姿にも興味津々である。

メルンテーゼにはまた別に竜いたりするのかなぁ……と、どこか熱っぽく呟いている。
あなたの口からニッポン、という言葉が出ると、目を丸くする。
「ここからは絶対自分の世界に関わる話は聞けないだろう」と思っていたのに、普通に自分の国名が出てきたことに、激しい衝撃を受けたようだ。

一人で混乱していたが、あなたの名前を聞くと、少しばかり落ち着いて何度か口の中で繰り返す。

勢いよく、頭を下げた。

忘れられていたことにショックを覚えるでもなく、モノは淡々と続ける。

事務的に機械的に無感情的に、モノは言う。そしておもむろに兜に手をかけたかと思うと、その兜を外す。
そこには何も無い。その下、鎧の中にも何も無い。有るのは、顔があるべき箇所で宙に漂う、不思議な赤い光だけ。

そう言って兜を再び被り、次にこう言った。

嫌味ではなく、悪口でもない。子供が言うようなその言葉は、本当に心の底から「問い」であった。

とほほ、と青年はため息を吐いた。