もうすぐ森を、抜ける頃でしょうか。

ふむ、確かに魔法が当然に存在する世界では魔法は超自然でも何でも無いな。
私の世界では魔法がなかったものでね、ついそういう言い方をしてしまう。

なるほど、自分自身への呪いか、それは実に興味深い。
できればもう少し詳しく説明してもらえるかな?
一言でなくても構わんぞ。

与えるもの、奪うもの、拾い上げ捨てるもの、望む望まざるを良しとせず、ブラウダリヤの名において、それを我が手の外側に。
あ、大体分かったんですね。それは良かったです。光ってるとしても、光るのを見るんじゃなくて自分が光るのはやっぱり恥ずかしいですよ。分かってくれたみたいで何よりです。私が思うに、やっぱり人間話せば分かるんだと思うんです。

聞く耳を持つ水晶に囁く。しきりに降り注ぐ雨の中に眠る純潔の雫、耳に届くのは波紋、空より来る福音は我の名を潤す……なるほど……。呪いって結構簡単なんですね。すいません不勉強で──ってあれ？　それってつまり私今呪われてたりするかもしれないってことですか？　いやでむしろ、私にも呪いが使えてるかもしれないってことですか？

黒の金貨は意我の現出、剣は血を分かち雪崩から解き放つ。挑み、ラキアの腕に刻まれたピジェーリューシュの逆罰の星、異土なるメリルクシュラの上にある蒼天の王、安寧乱すものは天の光を遍く黙す。うーん……？
あ、えと、じゃあ気にしないですけど、例えばソルトさんが銀行の人なら、会話が貯金なら、会話してるだけで利子をくれるのが呪いなら、呪いって言葉が元になってるんですか？　呪いのための呪文みたいなのってあるんですか？　あ、商売上の秘密とかだったらごめんなさい。でもちょっとそこのところ知りたいので。

「………。」

「………。」

『呪術師殿
　貴公の言葉を信じよう、彼の光景を見る者は、不佞の同胞では無い、と』

『しかし、それでも彼の様な光景に囚われる存在がある事を、不佞は断固として是とする事を出来ない』

『何故貴公は、彼の光景に尊き存在を突き入れ、思念の業火で焼きつくさんとするのか』

「………。」

『三つ目の問の答え、不佞はそれを確かに聞き、解する事はできた』

『しかし、不佞は自らが解した意味に腑に落ちざる箇所を見出す』

『愛し、使い潰す。存在を歪めるほどに、思念の業火で焼く』

『呪術師殿、否』

『ソルト殿がそこまでを行う、その理由——』

……ねえ、少しいいかな？
君が『呪術師』だと聞いて、来たんだけど

君の都合がよければ、話を聞いてくれないかな。

……さ、リハビリがてら、運動でもしようか。

仲間が手負いの状態で、無理はさせたくありません。
お早めにお引き取り願えませんか。

……うん。大丈夫。ちゃんと、考えずに、動ける。

いよぉ。・・・おいちゃん暇なんけど相手してくんね？

あやぁ、お客さん？お相手しますよーっ！！

いよぉ。・・・おいちゃん暇なんけど相手してくんね？

よし、おわり。次の所、行くか。

……最後に、『九つ目』を、もう一度。

…これで、ひと安心でしょうか、よかった……。

……何か、少し。手応えが、あったかもしれない。

おうおうおう、結構いいスジしてんじゃん。

俺はアヴィドってんだ。強ぇ奴は嫌いじゃねぇぜぇー？
ちらほら見かけるが、あんたらみんな一揆の連中だろぉ？
いやぁ大いに結構、存分に暴れてくれると助かるわぁホント！頼りにしてっからよぉ！！

あぁそうそう、ドロワっつー黒髪のお坊ちゃんを見つけたら教えてくんねぇ？？
リーゼロッテとかいう真っ白い美人さん連れてどっかにいると思うんだわ。

アホ親父の言いつけでなぁー、ちょっち・・・・・・・・シメねぇといかんのよォ。

あー、城ならあっちだぜ。大廊下に続いてるからよぉー、坊ちゃん捜索頼むわぁ。

・・・っと、そんじゃなー。死なねぇ程度に頑張れよー。

よし、貰って行こうか。

……ああ、あったあった。こんなのでも『役には立つ』かな？

何か草の類ですとか、食材とかだと嬉しいのですけど。

……拾えるものは、拾っておく。

オッスオッス攻城戦はイケたかい？
君に頼まれた品物だけどちゃんとできてればおじさんもうれしいなぁ

ハッ…ハッ…アッー！アーツィ！
アーツ！アーツェ！アツゥイ！
ヒュゥー、アッツ！アツウィー、アツーウィ！アツー、アツーェ！

……この服、もう脱いじゃおうかな？

……生地、張り付く。脱ぎたい。
（プリーツスカートをたくし上げ、脚に風を送り）