ロークの押し殺した笑い声を聞きながら、傷ついた部分に応急処置を施す。

「いつまで笑ってるの。……あとちょっとだったじゃないか」
『……負けた、のは、事実』

　相変わらず他人事のように。この世界にやってきて一週間以上経っているというのに、力の扱い方は未だ慣れないまま。
　道連れの約束をした彼女とは、まだ合流できていない。

「とりあえず約束は水辺、だったよね」

　きょろきょろと周囲を確認しながら進みつつも、先程の戦いで場所を大きくずれていたようで。
　進んだ先、何度か見たオーバーオールの姿と出くわしてしまった。
　見なかったことにして去ろうとしても、その眼はしっかりとこちらを捉えている。

「…………(あ、だめだこれ)」

　思わず笑ってしまったのは許してほしい。

　
　

　唐突にどこかへと飛去っていったレーレの頭を掴んで掴んで回収する。何やってんだと声を向ければ小さいそれは外套のポケットの中に潜り込んだ。
　顔を上げる。己の契約したそれが見ていた方へと眼を向けた。
　

　そこで言葉が途切れる。銀の髪と、紅の瞳を見やって。そこで声が途絶えた。

何でもないかのように通り過ぎようとした時。青年の傍に居るゴレムに気づき、ふ、と笑いかける。

青年が連れている緑の子、エンブリオであり——
同時にこの世界に存在するそれとは微妙に違うと気づいたからか。
そう話しかけてふわりと笑う。