◇　◆　◇


　僕たちニューロはもともと、アイスオーブっていうものを核にして出来ている……らしい。
　ウィンターオーブとか呼ばれたりもするけど、ウィンターって言葉はニューロの間では嫌われているので通称アイスオーブ。
　でも、このアイスオーブっていうものについて説明するのはすごく難しい。
　ニューロがアイスオーブを核にして出来てるのは、アイシーマニピュレータの残骸から発掘したアイスオーブを流用してるから、らしい（ウィンターミュートの履歴の中にはそういう記述があった）

　で、アイスオーブって言うのはすごく頭が良い。計算とかもめちゃくちゃ早いらしい。
　でも、こいつはニューロ語っていう、メルンテーゼ標準語とはぜんぜん違う言葉じゃないと理解できないのだ。
　だからこいつに何かさせるには、ニューロ語で命令してやらないといけない。

　中でも一番すごいのは、アイスオーブ同士は『ネットワーク』っていう、目に見えない異次元みたいなもので繋がり合ってること。
　大昔のニューロは『ネットワーク』の中で『通信』（連絡を取り合ったりすること）し合うことが当たり前だったらしい。
　でも、メルンテーゼにいるニューロはもうみんな、誰もそのことを覚えてない。

　男爵が僕に教えたのはそういう、『アイスオーブを大昔のニューロと同じように扱う方法』だった。


　◇　◆　◇


　夜中にこっそり、アイスオーブをいじってたら仮想ディスプレイの光が眩しかったらしい。
　眠っていたトムが、目をこすりながら寝ぼけた声で恨めしそうに目を開けた。

　読書じゃなくて、メモを書きこんでただけなんだけど……眩しいのはどっちも一緒か。

　仮想ディスプレイを閉じて、毛布を抱えながらトムが寝っころがる敷布に並んだ。

-----------------------------------------------------------------


※PTMのENo.1741・トムをお借りしました。

みんな死んでしまっている、と聞けば、孤児なのだからそうだろうと思う一方で、
こんなこと、訊くべきではなかったと思う自分が居て、少しばかり俯いた。

何それすごい、と言わんばかりだが、これはひどい勘違いである。

一人で何やら納得したように、二度ほど頷いたりして。
それから、はた、と振り返った。 彼でも聞き取れるだろうか、呼び声が聞こえる。

本当のところは、もう少し話していたいし、また、いつ会えるかも分からない。
少し、少しだけ、さみしい気もして、けれど言わずに。

俺は片手で剣の軌道を示す。

もう片方の手で防ぐ動作をする。