などと最初は驚いたものの、続く言葉を聞けば、やっぱり〜、と笑って頷いた。

言いながらも、彼の手が仮面にかかれば固唾を呑むように小さく喉が上下した。

見つめるその先で、取り去られる仮面。
たちまちあふれる魔力の奔流に髪があおられ、羽根が散る。
思わず自身をかばうよう、顔の前に手をかざして目を瞑った。
嵐のようにも思えた力の波が治まって、先ほどまでとは違う響きの彼の声を潮に、そろそろと目を開ける。

言いかけた言葉は、常の軽やかさとは違う滑らかさで話し始めた彼の声に、静かに喉奥へと引っ込めた。
据えられる金色に、緊張するように髪と同じ色の羽毛がぷわ、と逆立った。
それでも、気圧されないよう足に力をこめて立つ。

遠慮がちに手を伸ばし、彼の袖をつまんで引こうとする。
仮面を持っているだろう方の手。少しだけ、仮面に触れさせてはもらえないかとねだるように。
だが、己のパーティの戦力を分析する彼の言葉にまた、意識を仮面から彼へと戻した。

差し出された紙袋に人差し指を当て、何事か呟く。
細い声が紡ぐ旋律と共に、紙袋がぼんやりとした光に包まれた。

いうだけ言って右の手で紙袋を掴んで受け取り、
腰の位置にあった左手の親指を弾く——済んだ、硬質的な音とともにくるくると銀色の硬貨があなたの目の前で踊る。
……恐らくあなたにとって見覚えの無い意匠の銀貨は、見た目以上にその重みで価値をストレートに伝えてくる。

……大した理由も無く貢がれるのも不気味だから、一応対価として——といったところだろう。
イベントのプレゼントという概念を完全にすっ飛ばしている。

それで用は済んだ、と言わんばかりに背中を向けた。
あなたが声を掛けるなり引き留めなければそのまま立ち去るだろう。