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ユカラ・センドウ

　幼き頃、妹と一緒に奴隷商に売られた少年。
　労働力ではなく愛玩奴隷として貴族にいたぶられる毎日だったが、国の騎士団が帰属の屋敷を奴隷違法条例に於いて襲撃。
　セツカ（Eno.458）に匿われながら騒ぎの中逃げ出すが、セツカと別れた後、目的不明の別の追っ手に遭遇。
　崖から転落し瀕死の重傷を負うがレイヤ（Eno.458）によって助けられる。
　数年後、サクラの卒業試験についてくる形で旅をしているうちに生き別れの妹であるマグノリアと再会した。
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ここに来る前に出会い、そしてここで再会した知人であるカオツという獣人と話していて出てきた言葉。

─幾ら縁があっても別れる時はあるからな
　　だからこうして再会できたら次のさよならが来るまで楽しくしようと思ってンよ

今まで考えたことも無かったが、今周りにいる人達の存在を当たり前と感じていたかもしれない。
しかし兄上の余命が幾ばくもない事、深雪が何らかの力で異世界から飛ばされてきた存在である事、そういう事を考えれば突然の
さよならはいつ来てもおかしくない。

兄上は、自分が居なくなった後の僕の事を想い、僕にもっと社交的になって欲しいと願っていた。
今はサクラさんが兄上を救う為の研究をしてくれているので兄上は居なくなったりしないと信じている。
けれど、僕だっていつまでも兄上の世話になっているわけにはいかないのは分かっている。
しかし長年の奴隷生活と山篭り生活で他人との関わり方がよく分からない僕にとって、社交的に人と接するというのは少々難しい事
を要求されている様に感じていた。
ならば社交的な人に聞いてみよう。
そう思い僕はまずサクラさんのところを訪れた。

　＊　＊　＊

「他人と良好な関係を築く接し方…？」
「うん、早い話が友達を増やしたり仲良くするコツって何かな？」

僕の問にサクラさんは顎に人差し指を添え首をかしげる。

「うぅん…相手に興味を持つこと、かなぁ？」
「興味を？」
「そう、相手の話を聞いて、ふぅんそっかーで終わるんじゃなくて、気になったことをじゃんじゃん聞いてみちゃうとか。
　例えばアズちゃんだったら、お仕事のおはなしをもっとつっこんで聞いてみちゃったり？」
「それは…してると思う。全然知らないことだから結構興味あるんだ。」

サクラさんはうんうんと頷くと、ふと思いついた様に言葉を続ける。

「じゃあウルドは？ていうか…ウルドとはどんな話ししてるの？」
「…………マグノリアのこと以外は記憶にない。」
「……えと…マグちゃんのことしか話してないの？」

そう尋ねられ、深雪と普段どんな話をしてたかと記憶を探る。
何か話しているような気もするが、正直あまり覚えていなかった。
その事をサクラさんに伝えるとサクラさんは少し困った顔をする。

「多分だけど、ウルドが初めてあたし達と会った時、一番歳が近いお友達ってユカラ君だったと思うの。」
「あいつ12歳だったもんね。」
「そう、今はユカラ君より3〜4くらい上だけど、一緒に成長した訳じゃなく離れていて自分だけ成長して再会した訳だから…
きっとウルドにとってユカラ君は昔の記憶のままでの再会になったんじゃないかなぁって。」
「…どういうこと？」

サクラさんが言いたいことがよく分からず思わず難しい顔をして尋ねると、サクラさんも同じ様に難しい顔をして唸ってしまった。

「えぇと、アカデミーで一緒に過ごしたあたしとはまた違うベクトルで近しい友達の一人だと思われてるかもってことかな？」
「ふぅん？…つまり深雪にもうちょっと興味を持てばいいのかな？」
「そういうこと！とってもイイ子なんだよ、ユカラ君も今よりウルドのこと好きになると思う。」

深雪への好感度があがると言われ、僕は思わず顔をしかめかけてしまうがサクラさんの手前なので無表情を装う。
そして相談に乗ってくれたことにお礼を言い部屋を出た。
するとこのタイミングでちょうど廊下の向こうから歩いてくる深雪が視界に飛び込んでくる。

深雪に興味を持つ…
はっきり言ってしまえば全く興味がない深雪の行き先などを尋ねてみようか。

「深雪。」
「お、どうしたのユカラ。サクラの部屋に用事だったの？」
「まぁね。深雪はどこか行ってたの？」
「うん、兵庫さんの方の調査でね。外で調べ物してきた帰りだよ。」
「へー。………。」

これまたすこぶるどうでもいい内容の返事が帰ってきたので僕は返事に困窮する。
本当に興味のない話題を回答として出された時はどうしたらよいのだろう。

「……がんばって。」
「ありがとー。」

なんとか絞り出した精一杯の言葉に深雪は軽い感じで返事をして自分の部屋へと向かっていった。
その背を見送りながら、僕は大きなため息をつく。

前途多難だな。
そんなことを考えた。

＞ユカラ

（肩を竦めて申し訳なさそうに頭を下げる）

（胸元に当てた手を強く握りしめながら）

＞兵庫さん

＞ユカラくん

＞マグノリアちゃん

＞サクラちゃん