山は燐光を放っていた。
無造作に散らばった様々な大きさの星屑。
鬱蒼と茂る木々に、露を帯びて湿った草に、漆黒の岩に土に、明滅する小さな光。

薄紅の髪の少女は、星屑の一つを摘みあげてみる。
少女が触った星屑は、瞬間にサラサラと粉になって風に吹かれて消えていく。
それを眺めながら少女はこう言った。

「何か、こんだけチカチカしてると、ちょっと、いや、だいぶ、鬱陶しいな・・・。」

え、思った反応と違う。



少女は黒くて丸くてもさっとしたやつの口をむぎゅうっと掴むと、小さな掛け声とともに近くの木に向けて投げる。
黒くて丸くてもさっとしたやつはくるくると空中で回転すると柔らかな草むらに落下する。
黒くて丸くてもさっとしたやつの落下と同時に星屑がパーンとはじけて輝いた。
ふらふらと飛んで戻ってくる黒くて丸くてもさっとしたやつを見て、少女はけたたましく笑いはじめた。
黒くて丸くてもさっとしたやつが全身にきらきら光る星屑をまとっていたから。

「何かすごい失礼なんですけど。」

黒くて丸くてもさっとしたやつが勢いよく身震いをする。
ぱぁっと光が周囲に降り注ぐ。
薄紅の少女にも降り注ぐ。












黒くて丸くてもさっとしたやつは、昔見たとても綺麗な景色を思い出した気がした。

気がしたのだが……目の前には、すごいうねんうねんしたヒカリゴケのかたまりみたいな、
なんか、すごい、光ってる……うねんうねんしたものが……。


「ぶっ。確かに光り過ぎ！」

黒くて丸くてもさっとしたやつの笑い声に薄紅の少女は我にかえる。

「ああああああああ、きさまぁぁぁ！！！」

ふわふわなワタアメのような髪に光の粉が細かく散っている。
一体化して、そりゃあもうヒカリゴケのかたまりみたいになっている。
これを取り除くのは大変だろう。

「この馬鹿ネコー！お前なんぞ電飾ネコにしてやるぁぁぁ！！！」

幻想的な景色に似つかわしくない怒号が山の空気を震わせた。

イチジクは一生懸命ブラシで髪を梳かしながら星屑を払っている。