結局リューナ様が駄女神なのを再認識したわけですが。
とはいえ、やらなきゃいけないことは減りましたね。

境界ってのは、つまり私たちのいたクレセントを守る結界だった訳で。
あんな女神ですけど、力はありますし。
本当はクレセントにつながってる世界も一杯ある、ってことが分かりました。

私に掛かってる、ってのは、どういうことなんですかね。
外の世界でもやっていけるかでも見られてるんですかね？
いやまぁ、こっちにいてもリューナ様が世界間の通信なんて簡単にしてくれそうですし。
戻らなくても寂しくはねーんですけど。

少なくとも、この世界……メルンテーゼは広いですし。
ここをしっかり探検したら、かなりの時間が過ぎそうですね。

……その頃には私は幾つになってるんですかね。
その間に恋愛の一つでもしたいですよ！

小さなオニキスの欠片をいくつか掌から取り出した。
漆黒の結晶は掌の上でふわふわと浮かんでいる。

ふ、と腕を振るとそれにあわせて欠片がそれぞれ綺麗な曲線を描いて飛んでいく。
近くの木立から落ちてきた枯れ葉をそれぞれが空中で掠め、
くんっ、と手首を返すと再び手元に帰ってくる。
欠片がグラスの手元に戻ると同時に、固く枯れた広葉樹の葉ははらりと八つに散った。

言いながらエステルをじっと見つめ始めた
やたら好奇心に満ちた視線である