レースを透けて射す光。
部屋の中で、二つの影が話している。


————ねぇ！あなたそれ弾けるの！？
—————ホントに！？　じゃあ、じゃあさ！
————これ、これ弾いて！お願い！
————すご…上手いなァ。
————ねぇ、あなた、名前は？


いつの間にか、差し込む光は朱の色に染まっている。


————……は、この先どうするの？
————そっか…まぁ…教練、次席だもんね。
————…じゃあ、いつか、いつかまた会う時はさ、連弾しよっ。
————私も、上手くなっとくからさ！


…まどろんでいる。
自覚はあるが、目覚めることはできない。
もどかしい感覚。

ふわりとした感覚と、一瞬だけ暗くなる視界。


————ここが、あなたと私の部屋ね。
————何、萎縮してるの？　…バカみたいに緊張しないの。


影が二つなのは変わらない、けれど、これは違う部屋だ。


————あなたそれ弾けるの？
————へぇ……いいわ、素敵な音。


覚えているメロディ。スコア。呼吸。


————自由に使いなさい。どうせこの寮にいる奴の腕なんて大した事ないから。
————ついでに管理も任せちゃおうかしらね。…何、文句あるの？


私の音で、笑ってくれている人がいる。


————不安？……そうでもなさそうね。
————色々声があるのは知ってる。でもね、信用してるのよ、あなたを。
————必ず戻ってきてもらうわ。…その時は、また聞かせてもらうわよ。


—————————————————————————————————————————————————————。


うっすらと目が開く。

「ん…。」

そろそろ見慣れてきた、安宿の天井だ。

「……夢……。」

ぼんやりとする寝起きの頭で、なんとかそれだけを理解する。
寝起き特有の気だるい感覚のまま身を起こした。

ベッドから離れた姿見に、ワイシャツ姿の目つきの悪い女が映っている。
少しだけついた寝癖を軽く手櫛で整えながら、小さく嘆息した。

あんな夢はこちらに来てからは初めてだ。
………久しぶりに弾いたからだろうか。

「…………似ていたかしら。」

思えば、そうかもしれない。特にあの明るい笑顔なんかは。
自分の演奏で笑顔を浮かべてくれた事が、だぶったのかもしれない。

意識せずに、自分の両手を見ていた。
あの頃に比べたらだんだん傷も増えてきた。隠すように、拳を握る。

自分にまだ、一緒に弾く資格はあるのか。
そう自問しかけ………無駄な事か、と思考を止めた。どうせ寝起きの頭だ。


時計を見れば、習慣よりは少し早い時間だ。
少しゆっくりな朝を迎えるのも悪くない。

一度大きく伸びをして、ベッドから降りる。



…さて、今日の仕事の準備を始めよう。

お礼を述べて、両手でそれを受け取る
花へ顔を近づけ、嬉しそうに笑う

そう言うと、またエヘヘーと笑って花束を見た

歯切れの悪い返事を返しながら、傍に居る相方を見やる。
そして、強がるように笑う。

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> use option: NYPHN code2, GOPHN code3, HYKYH code4
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> -- ready --

声と共にヘクスが晴れ、曖昧になっていた姿が顕になる。

緑色のヘクスが全身を覆い、また晴れる。
そこには元通りの男の姿。

# make matrix
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> -- ready --

声と共にヘクスが晴れ、曖昧になっていた姿が顕になる。