———私の体は少し、普通の妖狐とはワケが違う。
すっかり塞がった斬跡を撫で、溜息を吐く。

生まれた時の髪の色は金色だった。
狐の耳も、尻尾も、今ある金髪もその頃はなかった。
あまり他人と接するのが得意でないのは昔から変わらず、
子供の頃はいつも陽姫の後ろにくっついてた。

いつだったか、その時のことはあまり覚えていないけど、
数百年前に流行した、流行病にかかったんだったと思う。

当然薬も流通していなくて、３日もたないと言われたらしい。
大妖怪・嵋祝の力と血を受け継いだのはその時だった。

今の私の体には、自分の体に見合わないぐらいの妖狐の妖力が溢れている。
生命力も然り、ちょっとやそっとのことでは、滅びない。
……ベースになっているのがヒトの体だから、対外的に強いわけではないけれど。
ヒメと昔やったゲームに例えていうなら、
HPも防御力も低いけど、必ずHP1で踏みとどまる…といった感じかもしれない。

妖力に関しても、煩わしい部分が多い。
父親に仕込まれた刃術と、暗器の使用、
妖力を利用して、東洋の遁術を再現したもの、を組み合わせて使っているけど

妖力を使いすぎると、体が持たない。
嵋祝の力が強大すぎるといえばそれまで、元々病弱なこの体は耐え切れない。

今までは自分がどうなろうと気にしなかったけど、最近はそうもいかないし…。
少なくともあの子の目の届く範囲では、気にかけないといけなくなった。

この間の砦跡の姿なんて間違いなく見せられないしね。
陽姫もそうだけど、真昼も……アヤメも、あの子口が軽そうだし。

あまり驚いた様子もなく、ちゃきん、と音だけを残してナイフは消えていて。

穏便、という台詞に乗るようにHAHAHA!と笑って応えた。

クスクスと静かに笑う。

ハルは自らの胸に手を当て、全員の顔を見回しながらそう言った。
そして、その様子を見たトガノは…。

何を思ったか、いきなり懐から取り出したナイフの切っ先を振り下ろすような動作で女性の頬近くへと近付けた。