薄暗い闇の中に、ヴン、と光が灯る。

「無理を言って割り込ませてもらったのよ。どう。元気してる？」

闇の中でどこか楽しげな声が響く。
楽しい、というよりは、嬉しい、だろうか。
画面の中の銀髪の女が、それなりに、とそれに答える。

「報告書。いくつか届いたわ。」

ぱん、という音。
幾ばくかの紙束を左の手に打ちつけた音。

「報告書自体に問題は無いわ。いつものあなたらしい、生真面目な報告書。
でも、問題と言えば問題よね、これ。」

面白がるような響きが混じる。
画面の女は若干疲れたようにため息を漏らした。
その面白がるような態度に慣れ切っている風情。

「足りないんでしょ？」

あの僻地では申請書を出すわけにもいかないだろう。
情報部の通信機器を借用できたのもその辺をかこつけた事もある。
闇の中で女の声は少し得意げだ。

「当然。やたら基礎能力が高くて、なお強化される一揆の協力者。
それに加えて、原生なのかどうかもわからない上、対処の難しい謎の生物。
あなたを取り巻く環境に関しては全部ここに書いてあるじゃない。」

ぱんぱん、と紙束を強調する。

「そう思って色々手配はしておいたわ。あなたが以前申請書出していた分を含めて。」

短く返答する。もう少し可愛げがあるといい、とため息が流れる。
あれでも入社した頃よりは随分とマシにはなったものだ。

「数日中にはあなたの持ってる倉庫に転送されるわ。
携帯用の機具は入れておくけれど、組み立てその他はそちらでやりなさい。」

「今回の連絡はそれだけよ。引き続き、調査と報告に期待しているわ。」

ヴン、と光を灯していた画面が消え、薄暗い空間をわずかな静寂が支配する。
ふぅ、とため息をつくと同時に、男の声がした。

「…よかったのですか？　チーフ。」
「いいのよ、あの子には無事戻ってきてもらうのが仕事だから。」

何を今更、と肩をすくめる気配。

「その為のバックアップですか。」
「まぁねぇ。」

面白がる響きと共に、再び静寂が落ちる。

すっとわき道から出てくる隼人

表情は変わらないように見えるが、目線がキョロキョロと動いている。あの時に、「冗談よ」と言われているのにもかかわらず、また蒸し返している。

意図してなのか、よくわからない表情をしているが、きっとナンパだとは本人は思っていない。

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> -- ready --

声と共にヘクスが晴れ、曖昧になっていた姿が顕になる。

色んな意味で割り切っていた。

緑色のヘクスが全身を覆い、また晴れる。
そこには元通りの男の姿。

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声と共にヘクスが晴れ、曖昧になっていた姿が顕になる。