とりあえずは力なのだな、と。どの分割世界でもそれは変わらない。
遠くから雷の轟音が轟いては敵の戦列が乱れ、或いは烈風のごとき挙動でかき回される。
そんな景色を小高い丘の上から眺めながら、次の地点へと向かう。
聞けば、兵舎を独力で突破した者も居るらしい。どこのシマヅだろう。

ただ少なくともこの界隈は、まだマシな所ではある。
霜の降りる森林の中へ短機関銃を抱えて進む訳でもない。
目に見えぬ何者かからの襲撃に、短刀一本で立ち向かう必要もない。
死の危険とは、大分離れた場所なのだ。


・・・とは言え、無茶をすればあっさりと命は無くなる。
以前、一度は死んだ身と言えど、再度そうなるつもりは更々無い。
私を助けてくれる者は、私の中にしか居ないのだから。
白鋼の炎の騎士は、未だ眠りに就いている。
会話を交わしたのは、何十年前だったろうか。

失くしたものは大きい。
ならば、それを取り戻すための力もまた、大きい必要が在るのだろう。
力の奔流の中へと進み、それを受け止め、自身のものとする。
この世界は、それが行える環境へと変わりつつある。
土地の者には悪いが、私のために使わせてもらう。

そろそろ門番が待ち構えているだろう。戦闘態勢へ移行する。

目を瞑り頭を下げる。
傍らに座っている竜は相変わらず淡く光っている。

かつて龍の手形をしていた手を軽く挙げてみせる。

心無しか照れ隠しの笑みを浮かべているかのように見える。

聞きかけで言い淀まれると、やっぱり気になります。
そう言って不満そうな目でじっと見上げます。

考えこむのも大事ですけれど、人の話を聞くのは、いいことですね、と。

なんか大変なことを想像したのか、うぅぅ、などとうめいて。

相手を理解すること・・・そんな言葉を、もう一度つぶやいて。
なにか思い当たる相手がいたのかもしれません。

女の言葉を聞いて、軽く溜息を吐くと

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　興味深そうに手に取った。

　
　　　　　　静かに笑って、右手に魔術力場を形成した。

　
　　　　　　恨めしそうに天を見上げた。

　　　△　　土　▲
　　（　㊤　皿　㊤）　　がしゃーん
　　（　　　　　　　　）　　　　　　
　／│　　塊　　│＼　　　　　　　　　がしゃーん
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