疑問が疑問を呼びます。

私の記憶はどこまで正しいのでしょうか。
私は何を信じるべきで、私の、本当の思いはどこにあるのでしょう。

この身体は生きています。
絶えず熱を産んで、息をし、瞬きをし、どこかに行こうとしています。
この歪な身体は——どうしようもなく壊してしまいたい、そんな感情とは裏腹に。
この身体は、私は生きています。

いくつもの命は、きっと私のことを恨んで、死んでいったのでしょう。
そこに正義があろうとも、私がそれをいかに躊躇っていようとも、知るよしもないことです。
形として現れるのは暴力。抑止されることのなかった、私の暴力。
今、まさに今だって、それは矛先を探しています。
何かを急ぐように。
追い立てられているように。

それは、もはや懐かしい声に聞こえました。
メルンテーゼに来たその日の、おぼろげな記憶の中だけにある声が、
私の気まぐれな呼びかけに、応えてくれたのです。

シャントリエリは、いままでの沈黙が嘘だったかのように、
当然のように受け答えをするのでした。
その声は、私の頭の中だけに、反響していました。

トガノと名乗った黒服の男は、自らの懐に突っ込んだ片手を瞬時に2人の眼前へと出すような形で振り出す。
ヒュン、と乾いた音が鳴り終えると同時に、手にしているモノの金属部分が鈍く光った。

急に口を歪め、壁にナイフを突き立てた。
ガラガラと少量の煉瓦が瓦礫となって崩れ落ちる。
その態度や雰囲気は先程のものとはまるで異なり、ひどく醜く、浅ましい。

吐き捨てるようにして言うや否や、トガノの目と得物が光った。
その顔付きは獲物を見付けた狩猟者さながらに不気味な笑みで満ちている。

そこにはひと欠片の慈悲すらなく。
気の狂うような叫び声を上げながら急接近しつつ、フィリーの心臓付近へとナイフを振り下ろそうとしている。

見せられた腕に目を輝かせ、示された身体の箇所を順繰りに視線は追っていく。
　

悪気なく言う。