水辺での約束を済ませたあと、すぐにウィリンのいる森林へ戻ってきた。ウィリンを置いていくのは気がひけたが、シルウィアたちが見守ってくれていたので、いくばくかは気がまぎれた。

「あっ クレーさん、おかえりなさい」
「おかえりだにゃー」
「ただいま。ウィリンの様子はどう？」
「変わりありません。まだ、眠ったままです・・・。」

数日前に、ウィリンは寄生植物におかされ、それきりまるで植物のようにまったく動かなくなってしまった。水辺に行っている間に、ほんの少しウィリンにまとわりつく葉や茎が増えているような気がするが、それ以外はまったく変化が見られなかった。はたから見れば、彼女は気持ちよく寝ているようにも見える。

僕にはウィリンを目覚めさせることはできない。仮に目覚めさせる手段があったとしても、僕はそれを行使することをためらっていたに違いない。僕は魔法生物の研究者だからだ。研究者として、性急に事を変化させるのではなく、観察し見守ることが、理性的には正しい事なのだ。・・・そう思う事で、何も出来ない自分の不甲斐ない感情を落ち着けようとしていた。

やはり、いくら考えても、いま僕にできることは、ただ見守るだけだ。今晩も、彼女の寝顔をみて過ごそう。そう、これは研究なのだから。・・・そう結論がでたところで、何もせずとも思いがけない変化が現れていた。

「んーっ。・・・なんだかすごく長い間寝ていたみたい？ あら？ ここはどこ？ アップルさんは？」

対面にいる見知らぬ少女と、目が、会った。

ふむふむと頷いている

鞄から手帳を出してぱらぱらとめくっている

いまみんなで入っているこたつは電気がなくても魔法の力で暖まる特注製です。ただし、魔力は1回分だけで、素材の耐久性もないので1回しかつかえないようです。ただ、熱に弱い子たちが多いので、けっきょく暖は付けられず、低いテーブル付きの布団に足を入れているような状態です。