メルンテーゼに流れ着いて数日。一揆のため城への進行の道中で、

故郷の仲間が迷い込んだか否か聞き込みを続けていたが、それらしい情報は得られなかった。
自分と違って傷が癒えないままにどこかで伏せているか、
それともここに来てゾンビ化を食い止められず生ける屍となったか。

どちらにせよ、一揆に参加している同郷はいないらしいことだけは若干ながら確信を得るに至っていた。

当初戦力として数えられないものと思っていたが、エンブリオの予想外の影響といわゆる壁役。

白兵戦闘が不慣れな、もしくはその影響がないほうが真価を発揮できる編成にあって、
前衛を買って出たこともあって装備を優先的に都合してもらえ、
結果、秋月は有能なディフェンダー、かつフェリアを支援する形でのアタッカーとして立ち位置を確立しつつあった。

そう言うと立ち上がり、野営の見張りに向かう秋月の背中を見送るノームの懐が淡い光を伴う。

懐から取り出した青白い八面体の結晶。そのふちを指でなぞると光が沸き立ち、何らかの影が浮かび上がる。

人影は敬礼のような構えを取ると通信を切り、ノームも懐に結晶をしまう。

差し出されたその手に気付けば、ぱっと表情が明るくなる。
げんきんというか、嘘がつけないタイプというか。
少女からすれば大きな掌の上に自分が作った折り紙をそっと置いた。

再度伸びてきた手にも動じる事はなく、逃げない。警戒心がない辺りも平和な世界の出だという事を物語る。
頭が撫でられば、何故？と少しばかり、瞬きの数が増えながらも相手を見上げていたが、特に振り払うでもなく相手が満足するまではそのままに。

ポケットから、メモ帳となにやらやたらだるそうなクマが先についたペンを取り出し。
白紙の部分までページをめくれば、以下のようなものを書き出した。

まず地球。そして地球とは別に、もう一つ同じ大きさの円を隣に。
矢印を、地球から、もう一つの円に向けて弧を描くようにして。
その矢印の上に、スカートをはいて二つ結びをした人型。頭上には、はてなマークがたくさん。

そして、また同じように弧を描いて地球からもう一つの丸に矢印を引く。
今度はそちらには短いヒゲがはえた人型を書き。

最後に、今度は、そのヒゲのついた人型の傍に、もう一つの円から、地球に矢印をひいて、大きく　？　を付ける。

自分の世界に、戻る方法。
それを知っているか、と問いたいようではある、が。

ほっとしている秋月をじーっとみつめる
その姿からしてもやっぱり普通の人にしか見えない
平行世界といってもなにか変わっているわけではないのか、と思考をまとめる

（苦笑し、その二股に分かれた根で硬い握手を交わす）

くすくす、と笑っています。