旅の荷物としてバレンティナが持ってきた鞄には、どういうわけかやたら色鮮やかな服ばかり入っている。
荷物が多すぎるから減らしてきてくれ、と頼んだときにはまだ地味な色のものも入っていたが、
その中から彼女は目に痛いものばかりを厳選したらしい。
目立たせたくないときは上から外套を一枚羽織らせているが、その下はいつもの虹色だ。

大半を占める『ヌーディブランチ』と言うブランドは独特な色使いと財布に優しい価格が特徴とのことで、
彼女の故郷の若者の間で非常に人気があることから、わかりやすい地元のアピールとして着て行きたいとのことだった。
グランギニョリアには伝統の衣装と呼べるようなものは無く、常にトレンドを追い続けることが一般的らしい。
ゆえに礼を尽くすには流行りのものを着ていくのが良いのだと。

死んだ際に破れた時（今日は苔で足を滑らせ尖った岩に頭を打って昏倒した）は何故か
本人と一緒に服も直っているが、そうではない時間のダメージで服はすぐにほつれる。
おろちが着ているような実用性を重視したものを調達してはどうかと提案してみたが、
直して着るから大丈夫と突っぱねられてしまった。
実際、彼女は休憩時間を利用して器用に服を繕い、安物のはずの服を何度も延命させていた。

薄くて軽い服は思いのほか多く鞄に詰め込まれていたようで、旅路の最中にも関わらず様々なものを見ることになった。
バレンティナは旅先で初めて出す服を着るたびに僕に意見を求めてくる。
こういうものは意見と言っても大抵賞賛の言葉意外は受け付けてくれないものだし、実際よく似合っていると思うので、
毎回その旨を告げるのだがその度に喜んでくれる。
そしてその後時々、どこか寂しそうな顔で空を見上げている。

クネクネダンスだーと言いながら最早ダンスになった