いまおもえばそのひは、あさから猫のようすがおかしかったのです。


いちにちのはじまり。
ししょーがめをさますと、となりにいたはずの猫はすでにおきていたようでぼうっとしながらすわりこんでいました。
いつもはつつきおこされている猫がこんなあさはやくにおきているのはめずらしい、とおもいながらもししょーは猫にこえをかけます。

しかし。


「珍しいなァ、おめぇが先に起きてるたァ？」


『………』


「・・・・・オイ？」


『………』


ししょーのよびかけにもこたえず、猫はあらぬほうをみつめているばかり。
猫のひとみはまるでここではないどこかをうつしているかのようです。
もしかして猫はおきているのではなく、ただねぼけているだけなのではとかんがえたししょーは猫のめのまえにはばたいてちかよります。


『…？…ししょー…？』


うつろだったしてんがようやくさだまり、猫のひとみがししょーのすがたをとらえました。


「んだよ、ちゃんと起きてんじゃねェか？返事ぐらいしろっての。」


『ん…ごめんなさいなのです』


そうかえす猫のようすは、いつもとちがってちょっぴりげんきがありません。
ししょーはさすがにしんぱいになったのか、いつもよりやさしく猫にたずねます。


「おいおい、元気ねぇなァ！・・・・・本当に大丈夫か？」


『？…なにがなのです？』


「いや・・・・・いつもと変わんねェってんなら別に構わねェんだがよ。」


『小生はだいじょうぶなのです。へんなししょーなのです。』


「おいィ！？おめェいい加減・・・・・いや、やっぱやめとくわ。」


それっきり、ふたりともだまったまま。
あたりはしずまりかえっています。

だんだんときまずいくうきがながれてきます。
おかしな猫のようすに、ししょーがほかのエンブリオにそうだんしてみようかとかんがえていたところ、いきなり猫がたちあがりあるきだしました。

あまりにとつぜんのことで、あっけにとられていたししょーでしたが、


「・・・・・ってオイィ！？待てやくるぁああァッ！！」


あわてて猫のあとをおいかけます。


















「・・・・・おい、待てって！！」


猫のあしどりはおぼつかなく、ふらふらとぶれています。
しかし、まよっているふうでもなくまるでなにかによびよせられているかのようです。

いったいどこにむかっているのでしょう——？


なんとかおいついたししょーは猫のめのまえにまわりこみ、とめようとします。


「おめぇ、どこに向かってんのか分かってんのか？・・・・・おめぇにも分かってねェんだろ？」


『…………』


猫はだまったままこたえません。
どうやらずぼしのようです。


「ったく、そんなこったろうと思ったぜ。」


『でも…なんだか…こっちにいったほうがいい…そんなきがするのです』


「何でだよ？」


『それは…』


やっぱりこたえられない猫。
やれやれとししょーはおおげさにためいきをついてかぶりをふりました。


「へいへい分かった分かった。だがな、ここも王城の一部だ。知らないところをうろつきまわるのは自殺行為だぜ？せめて道案内できそうな奴は探しとけや。」


『ししょー…』


「んじゃ、とっとと探しに行こうぜ。」














そうしてなかまをさがした猫とししょー。
いっしょにきてくれることになったのはふたり（？）でした。

ひとり（？）はふしぎなしゅぞくのカリスさん。
とてもどくとくなすがたをしていますが、もともとはそういうすがたではないみたいです。
猫はともかくししょーもしらないしゅぞくらしく、かたそうなからだはどんなこうげきもはじきかえしそうでたのもしいかぎり。

おどろいたことに、ふたりのうちもうひとりがまえにいっしょにたんけんしたコスモスおねえさんでした。
おねえさんは猫がいこうとしていたみちをしっていたらしく、そのさきにはへいしたちのいるへいしゃがあることをおしえてくれました。



へいしゃ。
そこに猫ほんにんもしらないすすむべきりゆうがあるのでしょうか？

あいもかわらず猫はいつものげんきがかけているようす。
とにかくすすんでみるしかありません。

いっこうはへいしゃのなかをしんちょうにすすんでいきます——

何故かドヤ顔で胸を張りながら、必要以上にプルプルプル！　と震えて見せた。

すこしちょうしがわるいのか、あしもとがおぼつかずふらふらとしていましたが、
かぶりをふるとゆったりとかまえました。

と書かれたボードをもったまま、そのばにすわりこみました。

と書かれたボードをもったままぺこりとあたまをさげました。