「だいじょうぶ・・・？」

森の中で少女の声が聞こえる。

「しっかりして・・・」

心配そうに何度もつぶやく。


傍らには少女と同じ年頃の少年が傷を負って倒れていた。
どうやら付近の崖から落ちたらしい。身体のあちこちにはアザのようなものも見られる。
崖の高さは３，４メートル程度ではあったものの手当てが必要なことに変わりはなかった。





「かあさまからおしえてもらった『やくそう』・・・」

まだ幼く、おぼつかない手つきだが懸命に介抱を続ける少女。


「う・・・」

その甲斐あってか、やがて少年は意識を取り戻した。

少女の顔から笑みがこぼれる。

「ああ、よかったぁ」


・・・・・
・・・
・・

一瞬自分がどこにいるのか、はっきりしなかった。

先のユニコーンとの戦いに敗れてしばらく意識を失っていたようだ。
その間、夢の中で昔の記憶を思い出していた。


あの日の、私・・・


自分がヒーラーの道を歩むきっかけにもなった、幼い頃の初めての人間との邂逅。
あの時もちょうどここみたいに静かな森の中だった。

幸い命までは取られていなかった。
ユニコーンが乙女に対して慈悲をかけてくれたのか、それとも彼が護ってくれたのか。


そんなことを考えつつ、また歩き出すのだった。