——ふと、目を覚ました。
橙色に輝く太陽の光が、うっすらと目に入る。
反射的に空の色と太陽の方向を確認して、今は夕方なのだなと理解する。
身体をゆっくり起こす。硬い地面……どころか石の台座で寝かされていたので、身体中が痛…くない。
まるでふかふかのベッドで寝た翌朝の様に、身体は快適だった。

「お目覚めですか、魔王様」

夢とは思わなかったが、それでも呼名と、傍らにいる魔物の姿を見ると思わず深いため息が漏れた。
何か粗相を、と心配そうに聞いてくる老魔物へ、大丈夫と手で合図する。

「……実感が遅れて出てきただけよ。本当に魔王になったなんてね」

目覚めた時に身体が痛くなかったのも、その影響だろう。
どうも、知らずして根本から身体が作り変えられているらしい。…いや、もしかしたら今なお変異の途中なのかもしれない。
自分の身体が自分の知らない反応を示すのは、はっきり言って気味が悪かった。

「……良かった。私も魔物を産み出すのを見るのはこれが初めてでして。知識は私の血に流れているのですが、何かあったのかと心配……」

そこまで言って、魔物は急に口ごもった。
気怠いまま、目線だけをそちらに向けると、恐縮したように「申し訳ありません」と謝った。

「？　何がよ。はっきりしないまま伝えた事？」

「いえ。魔王様に、私如きが"心配"などと。失礼な事を」

溜息がもう一つ出る。

「……私は、そんな強くないわ。少なくとも心は全然強くない。
あなたが期待してる魔王にはなれないわよ、私。今も自分が魔王だって自覚が出てきて、凄く気が重いもの」

「……いずれ強くなりますとも」

「なりたいとも思わないわ。人間でいたかった。…なんで、私なのよ……」

「それは、先代を殺害したのが——」

「そういう意味じゃないッ！！」

カッとなって、声が出た。

「大体何よ、そのフザけた呪い！！　必死こいて魔王倒したら、そいつが次の魔王で、魔物を繁栄させましょうって！？
　ざけんじゃないわよ！！　なんでそんな事しなきゃいけないのよ！　なんでそんな、傷しか残らないのよ！
　それじゃあディラック達が、報われないじゃない！！」

捲し立てる。…ああ、醜い。
これは完全に八つ当たりだと知ってるのに。
心配してくれているのに。恐怖するではなく、ただすまなさそうに、老魔族は頭を下げている。

「……申し訳ありません」

「謝んない…でよ……。あんた、悪く、ないんだから……」

「…魔王様が悲しんでおられるようですので。
それで魔王様が悲しまないで頂けるなら、この老骨、いかなる事でも致します」

…ああ、そうだ。前にもこんな事があった。
故郷の村が何もかも消えた時。
なんで私を行かせなかった。なんでみんなを助けなかった。なんで仇を討たせなかったと、みっともなく、ディラックとグリフに八つ当たりした時。
あの時も二人は、ただすまなさそうに、私に生きて欲しかったからと言った。

「…………バカ。バカぁ…」

「……申し訳ありません」

止め処なく、涙が溢れる。
もう、罵倒の言葉は出なかった。

　左腕を軽く見せて稲妻を手に纏わせてみる、戦闘中に相手を麻痺させている稲妻と同じものだろう

微妙な表情をしつつも一応答えだす

危ないらしい

どこか感心したようにほぅと息を漏らす。不鮮明で不明瞭。底は知れないが……お互いに似た所はある

にべにもなく、きっぱりと答えられればあっさりと返す。

差し支えなければ聞いたみたい所だった。

なんて戯れるように笑って云った。

フィーグルの呟きを耳にすれば、その深刻さとはまるで正反対の、押し殺してはいるがそれでも漏れるような喜色を滲ませながら。

聞いては見たものの、その表情と深い嘆息から到底聞けるようなことではないと思ったのか。それとも単純に、興味がそちらへ移っただけか。

と、その続きを促す。

見当違いなことを言い出した。

いつもぶっきらぼうな人形が少し柔らかな表情を浮かべた…気がした。

傍らでウンウン唸っていた…ように見えたエルはそう言い残し
「それではーーー」と叫びながら走り去っていった。

共に取り残されたリバラが今度は申し訳無さそうに頭を下げた。

※次回から当人ではなく、別のものが徘徊し始めるのでご注意下さい。

気が合わない、とフィーグルの言葉に、
何ら反論をすることもなく、ただそう返した。

淡々と事実を語るだけのそれ。

要するに半端者だ、と息を吐いた。

フィーグルの殺意にも瞳は揺らがない。
凪いだままの無感情、じ、と彼女を見返してその呟きには。

　無理矢理、納得しておいた。
　天使については、やっぱり遠い目をしたまま。

　

　問い返されたことには、そうやって軽く言う。表情は、柔らかく。
　エルフについては、そう、とだけ返した。そこは深く触れるべきではないし、その必要も無いだろう、と。

　ロマンチックな返答に、少し考え込むような表情を見せて。

　と、ぽつりと、呟くように問うた。

魔法生物研究者とあって魔物を産む、というところに興味津々の様子です

少し考え込み

　やるやらない以前に、できないでしょーという姿勢。ぴおにまけるような相手が仕掛けてくるとは思えませんし？

　…………。

　集中力が持ちません。元々集中するとか柄じゃないのです、日常生活から気を張っていたら倒れてしまいます。
そーじゃない人は覗くとの指摘を受けて。

　叱られる対象が目の前に居るかもしれないことなど気にせず。

　敵の話をしていたと思えば、そんな素振りも見せず。基本的にお人よしなのでしょう。

　でも、あいきょーってなんでしょーね。根本的なところが抜けてる娘でした。

危険な生命体の気配を感じとり大慌てで対応しようとしている。

現在絶賛葛藤中

流石腹黒い

精一杯の妥協点らしい。