Vanetta's Diary - Page.7

庭園の管理者にして守護神、元王宮騎士団副長の現庭師ブランチマンに徹底的に叩きのめされて追い返され、
何とか逃げ延びて星屑の小川に辿り着いた７日目。今は出発前、川辺で野営中。
観光で色々見て回りたいとは確かに言ったけど、まさかこんな形で来ることになるとはね……

しかし、あれは化物なの？　今思い出しても、とても勝てるイメージが浮かばない。
あいつを抑えようと突撃したギラが、カウンターのタックルで思いっきり吹っ飛ばされて……
慌てて止めようと槍で牽制を、……と思った瞬間、私も吹っ飛ばされてた。
何を言ってるか分からないと思うけど、私だってさっぱりよ。
撤退しようと下がった瞬間にフェイが私の頭の上をすっ飛んで行ったのなんか、もう、笑いさえ出てこなかったわ。

そんな訳で、しばらく庭園に近づくことはなさそう。他の一揆参加者も軒並み粉砕されたって聞くし。

庭園の探索もこれで一旦中断。
しばらくはのんびりと、本来の目的の観光がてら色々回ってみましょうか。
いろいろ気になる事も出てきたし。

くすっ、と一人笑い、気分を変えるように手元でペンをくるりと回し、再び日記帳に向かう。

現王と亜人の協力関係がどのように構築され、何故それが成立するか。
もしきっかけがあれば気にしてみるとしましょう。

まったく、……先日の狂人サバスといい、退屈しない世界ね。
この先も何が待ち受けているのか、まだまだ楽しめそうだわ。


パタン、と日記帳を閉じ、革のバンドで固定する。
そして荷物袋にしまい、テントの外に出る。

　ジャックは真顔で言い終えた。

歌を返されるとは思っていなかったのでしょう、瞳が見開かれ、明確に貴女の方へ向けられます。
その瞳はまるで子供のように輝いていて、しかし、どこか焦点の合っていない虚ろな瞳。

相変わらずその言葉には貴女の聞き慣れぬ固有名詞が交ざり、歌は続く。

この男にとっても珍しい、貴女との“会話”を、貴女と同様に楽しむように。

と言ってヒナカは槍を地面にどんと突き刺す。

自力で来た、という言葉に目がきらりと光り、