王城の外れ。
生き物達が微睡む暗闇の中、その生き物はひっそりとその場所に居座っていた。

暗がりでも映える金の鬣
体を覆う鈍色の外殻
僅かな光を受ける鋼鐵の翼

赤い獣の片目は真っ直ぐに、目の前の何もない更地へと向けられていた。
何もない、いや何かあった。

且つて大きな規模ではなかった森だが、青々と茂り生命の育む寝所であったのだろう。

だが何もない。喰われたのだから。
ずるり——大きな口を開け、ばくり——と広がった喉で飲み込む蛇。


カーフェイネスはふ、と天上を見上げる。
生憎空には薄らと雲がかかり、星や月の光は僅かしか零れてこない。

≪儘ならないなぁ……≫

押し出されるように吐き出される息。
そのどうしようもない思いに。思い表せない気持ちに。

≪それでも僕は守ると決めたんだ≫

昔、この身を拾い上げられた前に思ったこと。
その思いこそが、我が本懐。

≪君達の救いがもう無くても、せめて安らぎの救済がある事を願う≫

そして彼は天上の雲へと一条のブレスを放った。
地面から伸びる一つの光柱。高く、高く、天上を貫いたそれは雲を裂き。雲の壁を散らす。

すると、その合間からそれが現れた。
月だ。
時間がたてばすぐに穴は塞がるだろう。だがその柔らかな光のヴェ−ルは、そっと、以前森であった場所に、降り注いでいった。

＞卍人さん

先ほどから赤くなったり蒼くなったりと忙しかったが、そろそろ正常な顔色に戻ってきた。

＞ご主人

小さく肩をすくめ

＞ルーチェさん

哀れみの瞳で表しながらティシアの腕の上からそっと肩に手をあてた。

　　　　　　　(遠い目)

この子本気だ