アトが振り返った先には、白髪の男が佇んでいた。
その手には、何かの模様が光りながら蠢いている。
模様は一度だけ強く光った後、次第に消えていった。

”虚無の貌”。創造神の端末でありながらその支配を受けず、独自に動く異端中の異端。
世界を渡る過程で何度か見た事がある。しかしそれは”枝”の中だけでの話だ。
枝の外にまで介入してくる端末など聞いた事がない。


白髪の男…虚無の貌はアトを一瞥した後に、まるで最初からそこに存在していなかったかのように消えてしまった。

度重なる神格の介入…ただの偶然とは思えない。
大方虚無の貌が、タンポポの神の介入にタイミングを合わせてきたのだろう。

……これは創造神の意思なのか、それとも虚無の貌自身の意思によるものか。
いずれにせよ、異世界へ渡れない以上はX-14をここで作るしかない。
幸いにも生命力は有り余っている。次のサイネルは、命の容量を多目にして作るべきか……

当然、翻訳してもらっている立場の樹里が名前のミスに気付くはずもなく。
挨拶はもう終わったものと、既に話題は別のものへと。
同情の言葉に、苦笑いまじりに後頭部を掻きながら、軽くため息を。
そこまで緊迫した状況ではないだけか、それとも元々そういう性格か、緊張感はさほど感じられないそんな態度であり。

厳しいことを言われる？
まず、そこがよくわからない。翻訳されたその内容にも、傷つく様子はあまりなく、ただ、きょとん、と腑に落ちないとばかりの表情をしていた。

この妖精、「そっかー」と言ったわりに良くわかってないようだ。
しかし、その様子から、単純に仲良くしたい一心での言葉であることが分かるかもしれない。

さっき練習試合をしたばかりの少女が、こそこそと様子を伺っている。
こっそり追跡しているつもりらしいが、姿はわりと丸見えだ。

シエラはそう言うとショーテルを振り回しダンスのように飛び跳ねていた
しかし、しばらくすると立ち止まり焚き火の前にしゃがむ

フローラルでエレガンティーな匂いが当たりに立ち込める
しかし、シエラは決して倒れず貴方を睨み続けるのだった

顔色は悪そうだが多少正気に戻りつつあるようだ

エミリー・ディグリース17歳、また一つ大人として賢くなる。

そう言ってイチゴのデザインがプリントされた包装の袋を追加で手渡した。何事もサービス精神からがモットーである。