とある紙片。

《何故、シィに力を譲った？》

机の上でぼけーっと帽子に擬態していた俺の横に、縦目玉付き三叉槍ことディーが声をかけてきた。
眠そうな瞳に肩あたりで切り揃えられた青色の髪。
珍しいことにディーはヒト型形態だった。
普段の厳ついフォルムからは全く想像出来ないことに、ヒト型時のコイツは美少女然としている。
全身ぴっちりと肌に張りつくタイプのボディースーツを内から押し上げる控えめな胸は好みが分かれるところだと思うが。

「あー？　なんだよいきなり。」

《我は、お前が世界に残るのだと思っていた》

「俺がアイツを残すことに決めたんだよ。今まで一人で戦わせてきたんだ。
　最後の百年くらい好きに生きさせてやろうと思ってさ。お前には特に関係ないだろ？」

一瞬、ディーの表情が変わったように見えたが、最近の視力の衰えからくる気のせいかもしれない。
答えはすぐに返ってきた。

《そうだな。お前はいつもそうやって自分を削ってきた。
　いつだってそうだ。我はそのたびにお前に言ってきた言葉がある。
　憶えているか、エル》

「お前が居なくなると困るヤツがいる、だったっけ？」

《……そう、困るのだ。特に我がな》

「ハッハー、擬態友達ならほらＧは、消えちまったっけか。
　でも他にも居るだろ。俺が居なくなっても——」

《困るのだ。お前じゃなければ》

俺の言葉を遮って、ディーがそう告げた。
見間違いじゃければ、顔が少し赤くなっているような。
いやいやないわ。相手はディーだぞ。コイツは俺の親友だ。
お互いそういう関係じゃないはず。俺、そんなに鈍感じゃないもん。ホントだもん。

《シィは、今居ないのか？》

「あ、あぁ。アイツなら『私より強いヤツに会いに行く』とかで出てったが」

《それでは、少しだけお前を借りるとしよう》

ディーが机の上から俺を手に取ると、自分の頭の上に被せた。
最近じゃ誰でも俺を被れるようになってる気がするが一応、そういうわけでもないと言っておきたい。
ディーはまぁ、許可しないでもないというだけで。

《どうせすぐに違う世界へと旅立つのだろう？
　次の機会があるかわからぬ。その前に少しだけ、我に付き合え》



……続きは破られており読めなくなっている。

アムネジアに聞こえないようにではあるが、追い詰められてぼそぼそと呟いた。

　　　　　　　　　　幻妖な光を放つ木の葉の裏側から、覗きこんでるあなたはだぁれ？

　　　△　　土　▲
　　（　㊤　皿　㊤）　　がしゃーん
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　／│　　塊　　│＼　　　　　　　　　がしゃーん
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