ため息を、一つついて。

こちらも自然と笑みが零れ

（よくわからない言い回しののち、まるで子供のように頬をぷーっと膨らませてみせる。
　とはいえ、怒りの仕草を見せたのはその最初の返しだけで）

　

（その場でゆったりと、ダンスでも踊るようにくるりと一回りステップを踏んで。
　一見してかなり質の良い素材だろうと思わせるドレスを、ふわりと靡かせてみせた）

　

（どこかに向けてよくわからない言い訳をぶつぶつと呟く。何この女（…）

　

（その言葉が発せられた瞬間——それまでは確かに、存在も動きも無かったはずの二人の周囲に。
　ゆらり、ゆらりと——子供から大人、男女様々な「人形」が、まるで手品のように立つ。
　そして“人形使い”の背後から、がしゃり、と金属の足音を立てて——甲冑の人形も姿を見せ）

　

（目敏く注意を払っていれば、「人形」があらかじめ周囲の木々や物陰、地に伏せられた覆いの下などに隠されていたのを看破できたかもしれない。
　だが、“人形使い”の傍らに立て置かれていた大鞄。
　その留め具の隙間、内側からぬっと飛び出してトーコに向け指差している人形の左腕。
　その腕がいつ飛び出ていたか、その瞬間は——どう記憶と意識を辿っても、まったく察知できなかったろう）

「忍者」が思いがけない言葉だったのか、とても驚いているようだ。

一揆に参加していることについての感想を聞き、目を丸くしている。

そこまで言って、一人で勝手に何事か納得した様子。
男はうんうんと頷いている。

そう言って男はくすくす笑っている。

　心配そうにそう訊いて、それからトーコの話に耳を傾ける。
　忘れないでいてほしい、と。
　どうしてそう思うのか、彼女の胸中を察することはあまりにも難しくて。
　それでも、今思うのは、

　少しだけ不安そうに、そう問うた。