「彼らは運が悪かった」
彼女は私を慰めるように言いました。
しかしその言葉には何の意味もないことを、私も彼女も知っていました。

（これまであなたに願いを叶えてもらってばかりでしたが）
「ああ」
（私もその分、誰かの願いを叶えなきゃいけないような、そんな気がするんです）
「そんな義務はない」
（そうしなければバランスが取れないというか……何か得体の知れない闇の中から無制限に資源を引き出してしまっているような、そんな感じがするんです）
「そうかね」
（彼の願いを叶えてみようと思います）
「あなたがそうしたければ、そうしてみるといい」
（でも私には力がありません。……私には、使いこなせません）
「そうだな」
（私に力があれば、彼らが死ぬこともなかったのでしょうか）
「そうかも知れない」
（……ああ。また、私は）
「気にすることはない。何だっていい、望むのならば、願えばいいのだ。衰えたとはいえ、私の力が許す限りそれを叶えよう。私はそのために生きているのだから」
（でもそのためにあなたは）
「それ以上言う必要はない。私は道具として生み出され、これまで正しくそのように運用されてきた。道具は磨り減ることもあれば壊れることもあるだろう。だがそれこそが私の生きる意味なのだ」

しきりに背後を振り返りつつ進む。